基幹教育院について

基幹教育院の設置にあたり

基幹教育院長;丸野俊一

急激に進展し続ける教育の国際化やグローバル化社会、さらには少子化による18歳人口の減少や大学全入時代の影響を受けて学生の多様化を迎え、新たな視点から大学教育の在り方の再考を促す声が、国内外から、期待と願いを込めて上がっています。

一つは、ものの見方や考え方や価値観の異なる異文化の人々と、一つのテーマや課題を巡って、創造的ディスカッションを行いながら新たな知を創出し、問題発見・解決して行くために不可欠なコミュニケーション能力、自己表現力、創造的・批判的思考能力やコラボレーション能力などの育成を求める声です。

二つ目は、絶えず変動し続ける知識基盤社会を逞しく生きて行くためには、深い専門性だけでなく専門以外の様々な知識に通暁することが必要ですが、もっと大切なものとして、それらを状況や場面に合わせて適切に編み直し、適応性のあるものにしていく知的閃きと豊かな応用能力、さらには社会の諸問題の中に意味・価値を見いだす開かれた心と価値敏感性の育成を求める声です。

三つ目は、知識量のみに依存する学修ではなく、むしろ膨大な資料や知識を鵜呑みにせず、複数の視点から注意深く批判的・省察的吟味を行い、新たな可能性を開き、不可能と思える困難な問題や事象に対しても果敢に解決の方向性を探し続ける飽くなき挑戦心や態度、いわゆる大学教育の根幹というべき“分からないことを分かる喜び、学ぶ姿勢や態度創り”の涵養を求める声です。

これらの声に共通しているもの、それは状況や時代を超えて、生涯に渡って自律的に学び続ける、人間的にも知的にも成熟したアクティブ・ラーナーとしての心構えや態度創りの育成であり、社会を生きて行くために必要な「知識や社会や自分自身に対するモラルや価値判断の為のモノサシ創り」であり、強靭にしてしなやかな人材育成への期待です。

九州大学では、従来、様々な分野において広く全世界で活躍し、指導的な役割を果たす人材の輩出を教育の目標に掲げ、教育憲章では人間性、社会性、国際性及び専門性を重視し、全学一体となって教育に取り組んで来ました。しかし、上述した国内外からの社会が求める期待に呼応し、多様な課題を抱えグローバル化が進む国際社会において真にリーダーとして活躍できる人材を育成するためには、これまで以上に体系的で幅広い質の高い教育を充実させる必要があります。そこで、全学教育から専門教育へ、専門教育から大学院教育に至る一貫した教育システムを再構築することが不可欠であると考え、創立百周年を機に、次の百年に向けて、新たな教育組織として「基幹教育院」を平成23年10月に設置しました。

生涯にわたって自律的に学び続けるアクティブ・ラーナーとしての「学び方を学ぶ」「考え方を学ぶ」ための姿勢と態度(基幹)を育成する営み(学生は次の諸資質を学ぶ)

「基幹教育」とは、図に示すように、専門教育を学ぶ前に、学生にさまざまな可能な選択肢と出会う学びの機会を創り、一人一人が自分の判断で、自分が依拠しようとする枠組みを選択できるように、幅広い知識や視野を育成すると同時に、生涯に渡って自律的に学び続けるアクティブ・ラーナーとしての「学び方を学ぶ」「考え方を学ぶ」ための姿勢と態度(基幹)を育成する営みです。

基幹教育の重要な使命は、分野を越えて学生が知の交流を図ることのできるクラス編制の基に多様な分野の基礎知識を多様な教授形態で施し、学生に(1)省察的思考を伴う創造的・批判的精神、(2)柔軟性のある思考や態度、(3)広い視野と俯瞰力、(4)倫理や道徳に対する深淵な理解、(5)謙虚な心と豊かな感性、(6)人間性に対する深い理解、などを学ばすことにあります。基幹教育を通して、学生が確りした基本的な学びの姿勢や態度を修得できると、専門教育や大学院教育における学びにおいても、学生はその考え方の枠組みのもとに、高度な知識やスキルを修得することが容易に可能になると期待できます。その意味では、基幹教育は大学教育の中での根幹を担う極めて重要な教育的営みであり、重要な教育期間です。

その基幹教育を担う責任母体となる組織が基幹教育院です。基幹教育院は、有川総長の「基礎教育こそが重要であり、基礎教育の充実が専門教育や大学院教育の充実に繋がり、ひいては優れた研究の創出に繋がる。そのためには、高い研究能力や実績を有し、教育に対する強い意欲と熱意を持った優れた教員の全学からの積極的参画が必要である」という考えに、全学が賛同したことで、新たに誕生しました。

旧教養部とは異なり、基幹教育院に所属する教員だけで基幹教育を運営していくのではありません。基幹教育は、全学出動体制の基に、九州大学の全研究院からの教員の参画によって営まれます。これにより、大学入学の早い段階から、学生は幅広い知識や多様な経験やユニークな考えを持つ多くの教員に接し,学ぶことができます。ただし、基幹教育院に所属する教員が基幹教育科目を担当する割合は他の研究院に所属する教員よりも多いのは事実ですが、必要に応じて大学院教育をも担当します。またカリキュラム構成や授業科目の構成にあたり学部や学府との有機的連携を図る、さらには全学出動体制による基幹教育の強力な運営体制を進めて行く為の重要なマネージャー的役割をも果たします。

基幹教育院を核にして、全学が一体となって、基幹教育を充実・発展させる「学び続ける組織体」として九州大学は、大学の根幹である基幹教育に新たな視点から高い志と強い情熱を持って、前進的に取り組み、国内外の様々な分野でリーダー的な役割を発揮する有能な人材育成に努めて行きます。

主な活動

  • 全学教育
  • FD
  • 21世紀プログラム
  • アドミッションセンター
  • 学生生活・修学相談室
  • 大学院共通教育