九州大学 基幹教育院 次世代型大学教育開発センター

九大AL教室(ジグソー法)を開催しました

平成30年6月1日(金)九州大学アクティブラーニング教室「グループ学習の導入とジグソー法」を開催しました。今回は、グループ学習について考える手がかりとして、協調学習の一つの型であり、多様な実践が蓄積されているジグソー法に注目しました。当日は、「ジグソー法はなぜこのような形式にデザインされているのだろうか?」「ジグソー法のグループ活動が活性化しやすいのはなぜだろうか?」という問いの下、参加者が実際にジグソー法の学習プロセスを体験しながら、ジグソー法の背景にある基本的な考え方について理解を深めました。

開催概要

開催案内(PDF) ポスター(PDF)

【日時】平成30年5月2日(水)13:00~17:00
【会場】
九州大学 伊都キャンパス センター1号館4階1409号室

【参加費】無料
【定員】32名

【対象】大学教職員、大学院生、アクティブラーニングに関心のある教育関係者等。

【講師・ファシリテーター】
小島健太郎(九州大学 基幹教育院・准教授)

【プログラム】(予定)
16:30~17:00:導入
「グループ学習とジグソー法」
17:00~17:40:演習1
「ジグソー法のプロセスを体験する」
休憩(17:40~17:50)
17:50~18:30:演習2
「ジグソー法の考え方を活かしたグループ学習とは?」

開催報告

【参加者情報】

学外:18名(うち県外 6名)
学内:16名
合計:34名

【アンケート結果】

《満足度》

満足:16 概ね満足:4 どちらともいえない:1
やや不満足:0 不満足:0

《参考になった点》(抜粋)

  • ジグソー法の特徴や意義について、ジグソー法を使って学べたことが良かった。今後の授業などでジグソー法を活用してみたい。
  • 先生の指導がよかった。ジグゾ-法をさらに深く理解できた。学生に事前に資料を配るときの資料選び方が参考になった。
  • ジグソー法の理解が深まった。この方法も、TBL(Team-Based Learning)と同じく、自分自身の学びとグループの学びの両者に対する責任が重要だということを再認識できた
  • 単なるジグソー法のやり方の説明だけでなく、協調学習の理論的な背景の概要をしっかり説明されていたところが素晴らしかった。
  • ジグソー法そのものを知らなかったので今後有効活用できると思う。アイデア創出や知識共有にはワールドカフェを使ったワークショップを行っているが、確実なアウトプットを求めるなら、より仕組みとし確立しているジグソ-法の方が優れていると感じた。
  • 教材開発はなかなかうまくできないものだが、虹の成因についての実践は、非常に示唆に富んでいた。大学の研究者、学生の方々と共同で教材開発、授業設計をする機会を持ちたいと感じた。
  • 物事の理解や、問題の解決はジグソー法のように様々な人が多面的にアプローチして、互いに意見交換をする事で、より深い理解や学びができると思った。数学の授業では、一つの問題に対する様々な解法を考える時にジグソー法を適用してみたい。
  • 体験することによって、ジグソー法の概要について、その要素が持つ意味も含めて概ね理解することができた。職場体験研修の中学生や高校生、ボランティアスタッフの研修にも活用していこうと思う。
  • 高校の50分1コマの教科の授業ではなかなか導入が難しいのが現状。改めてジグソー法を通して育成される資質、能力を考えると、少々無理にでも取り入れる価値があると思った。高校の新学習指導要領に関わる総合的な探究の時間の中に、ジグソー法を取入れられないかと考えている。学習の型のみを借用するだけで、育成すべき資質、能力の視点が伴わないため、活動あって学びなしという批判を受けるが、このような研修と実践を重ねることによって、乗り越えられるような気がする。

《分からなかった点・もっと説明してほしかった点》(抜粋)

  • グループ学習やジグソー法に慣れていない人(はじめての人)にとっては、ワークの内容(素材)がやや難しかったかもしれない。
  • 演習をするには時間がちょっと足らなかったように思う。かなりの方が、時間内に資料を読みこなせなかったように感じた。
  • 時間が足りなかったので3時間程度かけて頂くと良かった。
  • 時間がもう少し長くても良かった。ワークをゆっくりとやりたい。
  • 短時間であったが、ジグソー法の使い方の一部は分かったと思う。実際にジグソー法を使った講義設計をする機会があると、なおよかったと思われた。
  • 3つ目のワークの時間が短かったので、また機会があればと思った。
  • 班での活動があったので、実際にジグソー法を導入されている方の話も聞けて非常に参考になった。実際の導入に当たって、特にグループの特性に起因する運用上の課題があるようなので、時間があれば、他の班で導入されている先生方の課題も聞いてみたかった。

【小島先生からの回答】ジグソー法の体験で利用した資料は、人によっては理解が難しかったと思います。エキスパート活動によって、個人の理解の不足を補える場合もありますが、今回は時間も限られていたため、消化不良になった方もいたかもしれません。また、やや内容を盛り込みすぎてしまったため、全体的に駆け足になり、後半の授業設計のワークの時間が不足してしまいました。申し訳ございませんでした。今後の改善の参考にさせていただきます。貴重なご意見、どうもありがとうございました。

  • 「共有する問い」は正解がある具体的なものが良いのか、ぼやっとしたものでもいいのか。
  • ジグソー法は始めに共有される「問い」の質が大切だと感じたが、ジグソー法に適した「問い」の見極め方を知りたい。今回の問いは「ジグソー法がなぜこういうデザインなのか?」という、わりと「正解」のあるもので、多くの考え方を知ることで「正解」に近づくものだったと捉えている。例えば「ジグソー法で自分はいつどの授業で行うか」という問いならば「正解」がなく、「最適解」を求めるものになると思う。ジグソー法は「正解」を導くのに向いているのか?それとも「最適解」へ近づくのに向くのか?または、両方可能なのか。どのような「問い」がジグソー学習に適しているのかをより詳しく学びたいと感じた。

【小島先生からの回答】ご指摘のように、どのような問いを設定するかは、ジグソー法を実施する際の重要なポイントになり、問いのタイプに応じて、教材、エキスパート活動、ジグソー活動などの活動のあり方も、少しずつ変わってくるはずです。私がこれまで行ってきた実践のなかで、協調学習による理解の深化を狙う際には、正解、最適解のいずれかというよりも、問いに関連する答えや理解に、レベルや深まりがあるテーマを選ぶように心がけてきました。つまり、誰もが同じ「答え」に同じように到達して終わりになる問いではなく、より深い「答え」を求めることが可能な問いです。このことは、学習者が他者と学ぶ意義を見出すためにも重要になると考えられます。研修会でご紹介した虹の教材はその一例です。ジグソー法に適した問いの性質については、私も検討課題として、今後さらに深く考えていきたいと思います。

  • ジグソー法に相応しいと考えられる課題やテーマの設定方法、およびグループ分けの基準や適切な方法があれば教えて頂きたい。
  • グループでディスカッションをしたら、「分野や内容によってジグソー法に合う教育と合わない教育がある」というような意見を教育経験者から聞かせて頂いたが、この点についてもっと知りたい。

【小島先生からの回答】すべてに明確にお答えするのは難しいのですが、課題、テーマ、内容については、上述の「問い」の設定に関する点が、重要なポイントの一つだと考えています。グループ分けについては、どのようなグループ活動を行うかによって、方針も変わってきます。研修会で体験していただいたような、複数の教材を用意して実施するジグソー法の場合は、一つのジグソーグループ内に、同じ教材を学習した人が2名以上含まれないようにすることで、エキスパート活動に取り組む動機付けが高まり、ジグソー活動への取り組み方に責任感が発生すると期待されます。ジグソー法におけるグループ分けについては、[1] の2.3 節にも記載がありますので、ご参照ください。
[1] 東京大学 CoREF 『協調学習 授業デザインハンドブック 第2版』

  • 今回の「ジグソー法」にしても「虹」にしても、異なるエキスパート用資料に内容的なオーバーラップができるのは避けられないと思われるが、それを意図的・戦略的に入れるのが良いのか、可能であればオーバーラップはない方が良いのか。あるいは、そもそも用意する資料はきっかけに過ぎず、学習者の探究的・発展的調査に期待するものなのかどうか、学習者のレベル(ステージ)によると考えるのかどうか。いずれにせよ資料の作り方が、この方法の鍵を握っており、かつ、最も難しい部分なのではないかと感じた。

【小島先生からの回答】ご指摘のように、学習者のレベルに応じて資料の設定を検討する必要があり、そこはジグソー法を検討する際の重要なポイントになると考えられます。今回の研修会で体験していただいたジグソー法や、ご紹介した虹の実践の際には、比較的理解が難しそうな資料については、似たような内容を持つ資料をもう一つ用意して、全体のバランスをとることを意識しました。

  • ジグソー法を導入するときに授業設計で注意する点、必ず入れた方が良い点について聞きたかった。
  • 資料を準備する際の留意点などがあれば、知りたい。また、モチベーションにばらつきがあるグループメンバーをまとめるための方策などがもしあればご教示頂きたいです。

【小島先生からの回答】細かな注意点としては、ジグソー資料の分量、および内容の相違や重複の確認と調整、時間配分の検討、知識の表現(外化)の支援を工夫する、などがあります。また、全般的なこととして、学習者がモチベーションを保つためにも、ジグソー法を用いて学ぶ意義が学習者に伝わる、という点はとても重要だと考えています。こうした観点から、私はジグソー法を実施する前に、学習形態に関する説明(他者とのやり取りによって効果的に各自が理解を深めることができる、など)も組み込むようにしています。

  • 小島先生が実際の講義でジグソー法を使う中で感じる課題やそれに対する改善策があれば教えてほしい。
  • ジグソー法は理解、体験できましたので、個々の実践における問題点や課題などのお話もお聞きしたかった。
  • 科目別の応用例を紹介してもらえると有難いです。本を見ても、生物学への応用例があまりないので困っています。

【小島先生からの回答】一般に、授業の準備における教師の負担の大きさは、ジグソー法を導入する際の課題の一つだと考えています。初等・中等教育の実践事例や教材は、[1] をはじめとして多くの蓄積があるため、そうしたものを積極的に活用したり、今後も新しい取り組みを共有・公開していくことが望ましいと考えています。個々の実践や様々な教科の事例については、今後、そのような内容の研修会が企画できないか、検討させていただきます。

  • 技術を習得する授業に関しては、ジグソー法の導入は難しいと考えていますがいかがでしょうか?

【小島先生からの回答】例えば、個別の知識を「知っているか知らないか」だけが問題になるような問いは、個人の理解を深めていくプロセスが実現しにくく、ジグソー法には適しません。同様に、個別の技術が「できるかできないか」だけが問題になる場合、ジグソー法の導入は難しそうです。一方、私たちの生活のなかで、技術をさらに上達させていくために、他者にコツを聞いたり、自分と他者を比較して自分のやり方を省みる、といったことはしばしば行われます。こうしたプロセスを含むような技術であれば、ジグソー法による学習が効果的になる可能性はあると思います。協調学習の観点から、理解の深化だけでなく、スキルの熟達も研究が行われてきていますので、それらの先行研究もご参考になるかもしれません。

  • グループ学習がうまく回っていない場合の効果的な修正の仕方を教えてほしい。

【小島先生からの回答】うまく回らない理由に応じて、適切な対応というのは変わってくると思います。原因を推測するためにグループの状況を観察し、その原因をうまく取り除くような介入の仕方を考えることが重要だと考えています。

  • 今回の体験はジグソー法が中心でしたが、講師の先生が物理のご専門ということでしたので、ハーバード大学のEric Mazurのピア・インストラクションや仮設実験授業などの評価や体験があると、グループ学習を設計・導入する上での参考になると思った。
  • 主テーマのうち1つが「ジグソー法はなぜ活性化しやすいのか」というものだったが、活性化しやすいことを前提に話が進んでおり(実際そうなのかもしれませんが)、ジグソー法に向かない内容や、デメリットなどについての言及がほとんどなかったように思う。実際にジグソー法を取り入れられている先生方のお話では、「結局最後までわからないままだった」という生徒の声も上がることがあると聞く。また、各グループに教員側から均一的な情報量を提供できるわけではないので(活発なグループとそうでないグループが出たりなど)、その後に「試験」などを行なった場合に成績評価に対してどう反映させられるか、という問題もあるように思う。そういった点に対しての課題解決までは、今回は時間的にも言及が難しかったとは思うが、メリットとデメリットを踏まえた上での活用方法、という形で紹介頂けると良かったかと思う。

【小島先生からの回答】重要なご指摘、ありがとうございます。研修会でも述べさせていただきましたが、グループ学習を導入する際には、他の教授法との比較検討を踏まえて適切なものを選ぶ必要があります。さまざまなグループ学習のなかで、ジグソー法は一つの型であり、かつ比較的複雑なものと言えます。そこにはメリットだけでなく、導入に際しての課題も存在します。ピア・インストラクションや仮説実験授業も多くの実践があり、私も物理学の科目では現在はピア・インストラクションを中心にした講義を実施しています。今回は時間の関係もあり、そうした複数の教授法の比較などには言及できませんでしたが、より包括的な視点から、ジグソー法の課題点や他の教授法との比較も含んだ内容を扱うことができれば、研修会の意義が増したと思います。今後の改善の際の指針にさせていただきます。

お問い合わせ先

〒819-0395
福岡市西区元岡744 九州大学 センター3号館3104号室

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