ヴィジョン

研究のヴィジョンについて書いた2015年02月15日の雑記を再掲しておきます。

Facebook経由で伝わってきた山中先生の高校生向け講演会での「VWの話」。研究者として成功するにはvisionを伴ったwork hardが大事、というお話です。これは留学先(グラッドストーン研究所)の所長の言葉であり、山中先生自身も実践し伝えている言葉でもあります。こういう金言は成功したからこそ言える事でもあって、実際は「visionを伴ったwork hard」を実践している人は山のように居るんですよね。それは、山中先生ご自身もよくわかっておられ、高校生に最後に贈った言葉が「人間万事塞翁が馬」でした。僭越ながらすごく共感できます。「人生何が起こるかわからないんだから、本当にベストを尽くしたらその結果は天に任せるしかないじゃないか」と私も思っていて、以前からfacebookの好きな言葉に「盡人事而待天命」を入れています。今のテニュアのポストを獲得する直前にそういう心境になったので、その頃に書いたんだと思います。

で、visionの話。元々の私の専門もvisionですが、ここではもちろん「視覚」の事じゃなくて「研究の展望」の事です。私の研究室では多角経営をしていますが、根底には「感覚系を解明したい」という思いがあります。生物が生きていくために脳によって創造されたのが感覚であって、神秘的で不思議で不思議でたまらない、というのが純粋な理由です。ただ、単に感覚系を解明したいだけではなく、そこから全く新しい何かを創造(クリエイト)したいという野望があります。最初は(今もですけど)、クリエイトしたい対象が「アート」でした。元々大好きなアートへの思いから視覚研究に行ったフシもあり、視覚研究からアートに意識が向いたフシもあり。でも、最近思いを強めているのは、脳の機能強化です。世界中の脳科学者も私も、こんなに脳の研究をやっているのに、研究テーマの発想・着想は旧態依然として「アタマのヒラメキ」に依るものが多いです。研究成果によって機能強化された脳によって画期的な発想・着想が得られてこそ、ブレイクスルーが達成できると思うのです。人工知能でもなく脳トレでもない、次元の異なる機能強化。こういう所に繋げて行きたいと、私は考えています。

最初の研究対象が初期視覚野だったということもあり、脳機能を説明する上で私の好きなアプローチは、やはりボトムアップ的なものです。感覚系からのボトムアップで創造した「思考システム」が発想し、その発想を基に「自分の脳」が研究テーマを着想する。私が行っている脳の研究は、そういう研究の「ブレーン」を創り出す事に繋げて行きたいなと思っているわけです。

公開日:2015年02月15日