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自然科学総合実験(2016)

基幹教育院教授 小早川 義尚

 人間は、自然現象の中に様々な法則を見いだしてきました。その営為である自然科学の進展には合理的な実証という過程が必然的に要求されてきました。一方で、自然現象には様々な階層での事象があり、対象とする具体的な事象ごとにそれを解明するための方法・技術も異なっています。また、人間はその解明した自然の法則を利用した創造的営為によって自らの生活を改善してきました。しかし、具体的な技術開発とその利用において近視眼的で総合的・俯瞰的視点の不足による多くの負の側面、公害・資源エネルギー・環境問題なども生み出してしまいました。
 そうした中、大学の理系学部での修学を目指す多くの学生も大学受験で選択した特定の科目に限られた学習しかしてきていないという状況があります。そこで、九州大学では、これからの自然科学の進展を担うべき理系学生は、高校では学ばなかった科目を積極的に履修するとともに、様々な階層の自然現象に直に触れて観察・実験を体験する必要があるとの考えに基づき、全理系学生に基幹教育・自然科学総合実験を必修の科目としています。

 具体的な内容は、重力加速度やヤング率の測定実験などを通して自然界の物理現象の基礎の理解を深め、実験機器の基本操作・報告書の作成方法を習得することを目的とする物理学実験、隕石と地球を構成している岩石の組織・化学組成・密度の成因について、また、地球の層構成形成における密度と浮力の重要性とアイソスタシーの原理についての理解を目指す地球科学実験、難溶性塩の沈殿・溶解反応の原理、元素の検出法についての理解を深め、自然界における化学現象を観察・考察する態度を身につけ、化学実験における基本操作・報告書の作成方法の習得を目的とする化学実験、観察・実験を通じて、生物の基本構成単位である細胞と遺伝子の実体であるDNAについての理解を深め、生物科学における実験的手法の基本を習得することを目指す生物科学実験から構成されています。

出典:『基幹教育院ニューズレター』第4号(2016冬)

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