フォーラム

Forum

法学系科目(2017)

基幹教育院准教授 梶原 健佑

 基幹教育では他の文系ディシプリン諸科目と並んで、法学や政治学の入門科目が開講されています。他の学問同様、法学や政治学も、法・政治に関する断片的な知識をただ覚えてゆく学問ではありません。残念ながら、法学=六法全書の内容を覚え込むこと、という誤解は今も一部に存在しているようです。もちろん一定の記憶作業は必要ですが、法学の重要な到達目標は、具体的な法の規定や判決を取っ掛かりとしながら、歴史的に営々と積み上げられてきた法学の基本的な原理・原則、思考パターン、正義の観念等々を習得し、それらをもとに、新たに生起する具体的な紛争に法的な解決を与えたり、ルール自体を俯瞰で評価したり、新しい社会的課題への適切な対応策を考えたりできるようになるところにあります。基幹教育における「法学入門」では、市民として知っておくべき法的な知識が講授されるほか、学生が幾らかでも上述の法学のディシプリンに触れられるよう、各教員が様々な素材を用いて、具体例と抽象的な概念や理論とに視線を往復させつつ、授業を展開しています。事情は「政治学入門」においても変わりません。扱う素材は教員によって日本政治であったり、中東政治であったり、東アジア政治であったりと異なっています。しかし、いずれも、学生が具体的な政治的事象、政治動態、国際関係等を適切な問題意識と観点から整理・分析し、自分なりに評価を加えたり、将来を展望したりできるようになることをも狙いながら、その基盤となる基本的な概念や理論、分析視覚や方法などが講義されているのです。新聞やテレビ等のニュースが扱う内容はもちろん、我々の日常生活そのものが法や政治と深く関係しているのですから、限られた時間であれ、法学・政治学的な知識を学び、その思考方法に一度でも触れておくことは、所属学部を問わず、学生にとって意義あるものと考えられます。
 また、ディシプリン科目のなかでは珍しい、英語による講義科目「The Law and Politics of International Society」が開講されていることは法学系科目の大きな特徴です。

出典:『基幹教育院ニューズレター』第6号(2017冬)
一覧に戻る