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サイバーセキュリティ基礎論

サイバーセキュリティセンター センター長 岡村 耕二(情報基盤開発センター教授)

 平成29年度から全学部の学生を対象に開講されたサイバーセキュリティ基礎論について紹介します。1年生約2,600人を15のクラスに分けて開講しましたので、1クラスいずれも150~180名の学生が出席する大人数での講義となりました(図1)。さて、サイバーセキュリティに関する知識や基礎的な技術情報を持ち合わせることが、今後、ICTを用いたよりよい教育を受けたり、研究を行ったりするうえでとても重要になります。サイバー空間とは ICT  機器をインターネットに接続し、オンラインで使用している時間や空間に留まらず、インターネットから切り離してオフラインでコンピュータや USB などの周辺機器を扱っている時も含まれます。そのため、ICTに関して技術的なことはもとより、法律、倫理に関する正しい知識と理解が常に求められます。また、文系、理系を問わず、全ての専門分野において共通的に必要なものです。さらに、我が国のサイバセキュリティ基本法でも、大学は学生にサイバーセキュリティに関する教育を十分行うことが定められています。
 このような背景で始まったサイバーセキュリティ基礎論ですが、春学期の8週で、
   1) サイバーセキュリティの概要や最近起きたサイバーインシデントの解説
   2)~3) 身近なパソコンやスマートフォンといったICT機器のパスワード管理、
       データ管理、無線利用を取り上げその安全な設定と使用について
   4) 研究・情報倫理
   5) 暗号技術
   6) サイバーセキュリティに関する様々な法律
   7) 著作権
   8) サイバーセキュリティと社会
 について勉強しました。8回ともそれぞれ独立した内容であるため、一般的な講義の様に最終週にまとめて試験をするのではなく、各講義の最後の時間に毎回小テストを行い、講義の理解度を評価しました。 

 

また、個人情報管理、研究倫理の勉強では、シリアスゲームと呼ばれるゲーム感覚で学習の定着度を評価、あるいは、その結果に基づいた復習を可能とするeラーニング教材も併用しました(図2)。シリアスゲームは、講義が終わった後で、バスを待っている間や電車に乗っている間などの隙間時間にでき、また、スマートフォンを用いてゲーム感覚で復習ができるので気軽に復習をしてみようかなという気持ちにさせてくれるのが特徴です。平成29年度は8回中2回のみの実施でしたが、平成30年度からはもっと回数を増やすことを検討しています。サイバーセキュリティに関することは毎年変化しますので、平成30年の講義では、学生が知っておくべき新しい技術的な内容を盛り込む一方で、倫理などの普遍的な内容も大切にした教育を行いたいと考えています。

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