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総合科目「人と人をつなぐ技法」

小湊卓夫(基幹教育院 人文社会科学部門准教授)

「人と人をつなぐ技法」という授業は平成20年度から平成25年度まで開講していましたが、基幹教育が始まることに合わせて一時中断し、平成29年度から再び開講した科目です。総合科目なので、学生が自由に選択できる科目ですが、開講当初から講義ではなくグループワークを主体とした授業を展開しています。
 講義名は、以前授業を共同開発した加留部貴行氏の著書『チームビルディング:人と人をつなぐ技法』という書籍から、許可を得て使わせて頂いています。
 これまで学生から「見知らぬ人とうち解けるまでには多くの時間がかかる」、「周囲の人々の協力を得て共同で物事に対処するにはどうしたらいいですか」といった悩みが寄せられていたため、ファシリテーション技法を体得し、様々な場面で活用してもらい、多様な人との出会いとそれを活かした有意義なキャンパスライフを送ってもらえることを目標に授業開発を行いました。今振り返ってみれば、この授業はアクティブ・ラーナー育成(特にマインドを持たせる)の一つのきっかけになるものと、自身の中では理解しています。
 当初の授業では、「チームの基礎的な知識と考え方を知る」、「チームのダイナミックな現場を知る」、「チームの社会への活用を知る」といった三つのモジュールから構成される15回の授業を展開していましたが、クォーター科目として開講した平成29年度からは、「対話を通じたコミュニケーションを知る」、「チームを理解し行動することを知る」の二つのモジュールに集約しています。ちなみに今年度の授業は次に示すような内容で実施しました。
項目名  内容
1.オリエンテーション 講義の趣旨説明と進め方
2.項目 自己紹介をはじめとした知り合い打ち解けるきっかけ作りの技法
3.ダイアローグ(対話) コミュニケーションにおける「話す」と「聴く」を深める
4.目かくしマスゲーム チームとしてどのように動くのかを考える
5.コンセンサスゲーム 協働作業と対立解消の方法を考える
6.貿易ゲーム 自立的に動くことの重要性を理解する
7.ワールドカフェ 意識の共有と納得について理解を深める
8.チームとファシリテーション これまでの活動を振り返りまとめる
 授業は毎回テーマを決めて行いますが、1)前回のフィードバック、2)チェックイン、3)テーマに沿ったグループワーク、4)テーマに関連した講義と振り返り、5)ミニットペーパーの記述、の5部構成となっています。授業のはじめに行うフィードバックは前回の授業で学生が書いたミニットペーパーの内容を整理分類し、学生がどのように授業を受け止め何を考えたのかを紹介し、前回と今回の授業のつながりを意識してもらいます。そしてチェックインでは4~5人のグループを作り、あるテーマについて各自で話をしてもらい、これから行うグループワークのための準備運動といった位置づけを持たせています。
 

学生のこれまでの経験を基に、対話を中核としたワークを取り入れ、授業での体験を通じて自分自身への理解を深めつつ、今後どのように考え行動するのかを模索するという授業のため、結論めいた何かを教えているわけではありません。そのため授業の成果を言葉で伝えるのは難しい側面もありますが、下記に示す最終回の授業で書いてもらったミニットペーパーの記述を見た時、授業の目的はある程度達成できたという思いに至りました。今後も学生からの言葉を糧に継続的に授業改善を図っていきたいと考えています。
  「対話で学ぶ、対話でワークショップをチームで進めるというよりはむしろ、対話そのものを問うたり、対話のプロセスの実践や気付きがこの授業ひいては学びの本質であると私は思う」 

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