化学専門チーム
基幹教育化学科目群の最大の特長は、化学を単なる「知識」として教授するのではなく、社会と結び付いた「科学的思考」を段階的に身につけさせる体系的な教育設計にある。すなわち、「身近な化学から出発し、分子構造・化学結合・熱力学へと段階的に深化し、原子・分子レベルから巨視的挙動までを一貫して理解させる教育体系」を実現することを目的として、「身の回りの化学」、「無機物質化学」、「有機物質化学」、「基礎化学結合論」および「基礎化学熱力学」を中核とする科目群を構成している。
導入的な「身の回りの化学」では、新聞記事や報道番組、日常生活における製品や環境問題といった現実社会の題材を積極的に取り上げ、高校レベルの化学概念を起点として、現代社会を化学的に読み解く力を養う。これにより、学生は専門分野の如何を問わず、化学が日常生活や産業・環境と密接に結び付いた学問であることを実感し、科学リテラシーの確かな基盤形成を図っている。
無機物質化学Ⅰ・Ⅱでは、周期表に基づく原子の電子構造から化学結合、溶液、化学反応へと理解を発展させ、現代社会を支える無機材料や化合物を具体例として提示することで、抽象的な概念を実感を伴って学べるよう工夫している。Ⅰ・Ⅱを連続して履修することにより、知識が断片化することなく体系的に整理される。
有機物質化学Ⅰ・Ⅱでは、原子軌道論・分子軌道論に基づく分子構造理解を基盤として、命名法や立体化学といった有機化学の「共通言語」を確実に修得させる。その上で、分子構造と物性、さらには分子変換反応へと学習を展開し、構造・物性・反応を相互に関連付けて考察する力を養成を行い、暗記に依らず、論理的に化学現象を理解・説明できる力の育むことを重視している。
さらに、基礎化学結合論Ⅰ・Ⅱでは、ルイス構造や電子対反発モデルといった直感的理解から出発し、量子力学、原子軌道、分子軌道論へと段階的に発展させることで、化学結合を現代的な視点から深く理解できるよう設計されている。これにより、無機化学・有機化学で学ぶ諸現象を「なぜそうなるのか」という理論的背景に基づいて説明できる力が養われ、専門教育への円滑な移行を強力に支えている。
加えて、基礎化学熱力学Ⅰ・Ⅱでは、量子化学が扱う微視的世界と並ぶ、もう一つの化学の基盤としての巨視的視点を体系的に修得させる。Ⅰでは、気体の法則を出発点として、熱力学第1法則・第2法則およびエントロピーの概念を学び、アボガドロ数規模の分子集団が示す性質を巨視的に記述する基本的手法を身につける。続くⅡでは、自由エネルギーや化学ポテンシャルの概念を導入し、純物質の状態や状態変化、平衡の成立条件、変化の方向性がどのように決定されるかを理解する。これにより、化学反応や相変化を定量的かつ統一的に捉える視点が養われ、無機化学・有機化学で学ぶ反応や現象をエネルギーと平衡の観点から深く理解することが可能となる。
以上のように、本化学科目群は、専門分野に進む学生には確かな理論的基礎力を、専門に進まない学生には社会を科学的に理解する視点を提供しており、基幹教育として九州大学が目指す「幅広い視野と深い思考力を備えた人材育成」を体現する化学教育プログラムを提供している。
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