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論理と感性の交叉点 — 思考をひらく感性・デザイン(2026)

感性・デザイン学専門チーム

九州大学の基幹教育がはじまった当初から、「感性・デザイン」科目群は「物理学」や「化学」と並び「理系ディシプリン」の柱のひとつとして位置づけられてきました。ただ、実のところ本科目群は、図形科学や建築史といった幅広い領域をカバーしており、理系/文系という区分では捉えられない領域横断的なラインナップとなっています。では、「感性・デザイン」科目群は何と何を横断し、どのような知の探求にかかわっているのでしょうか。
そもそも「デザイン」という言葉は、ラテン語の「designare(しるしをつける、計画する)」を語源としています。それは、混沌とした現実に秩序を見出し、想像力による思考や計画を目に見えるかたちとして構造化する知的な操作です。つまりデザインとは、思考を世界あるいは社会という環境に実装するための、論理的かつ具体的な「構築の技法」であるといえるでしょう。
一方、「感性」は、美学(Aesthetics)の語源であるギリシア語の「aisthesis(アイステーシス=感性的認識)」に結びついています。これは、論理(ロゴス)だけでは捉えられない事象や言語化されないニュアンスを伴う質を、感覚を通じて鋭く捕捉する「認識の技法」です。私たちの認識や経験は、知性と感性が協働することなしには成立しません。とりわけ複雑化する現代社会において、状況の本質を直感的に掴み取る力は、論理的思考を支える重要な基盤となります。
近年、社会課題の解決においてデザインの力が注目されていますが、基幹教育における「感性・デザイン」科目群は、この認識(感性)と構築(デザイン)の両輪を鍛えるために設計されています。たとえば、「図形科学」「空間表現実習」等の科目では、図法や空間の構成といった構築の技法を実践的に習得し、思考をかたちにする論理性を養います。また、「デザインアプローチ」では、デザイン思考やデザインの具体的なプロセスを学びます。「デザイン史」「世界建築史概論」「近・現代建築史」といった科目では、過去の人類がいかにして環境や社会と対峙し、どのような意図を持って世界を形作ってきたか、その歴史的な文脈と理論を読み解きます。
以上のように、「感性・デザイン」科目群は、理系/文系のみならず、計画/実行、論理/直感、科学/芸術、現在/過去/未来…といったさまざまな領域を横断し、架橋しています。世界を鋭敏に感じ取り、そこに新たな秩序を構築する――この一連の方法を学ぶことは、皆さんがこれからどの専門分野へ進むとしても、自らの知を世界や社会のなかで機能させるための不可欠な力となるはずです。既存の枠組みにとらわれない知性を養う場として、ぜひ本科目の扉を叩いてみてください。

 
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