概日リズム制御の基本骨格は明らかになりつつあります(2017年のノーベル生理学・医学賞)。しかし、なぜ概日リズムは約24時間で時を刻み続けることができるのか?また、光・温度などの外環境の変化に対してどのように自分の時刻を合わせることができるのか?加えて、概日リズムの生理学的な意義は一体何なのか?など、いまだにその詳細な分子機構は解明されていません。本研究室では、主にモデル生物であるキイロショウジョウバエを用いた行動分子遺伝学的解析により概日リズムの全貌解明を目指しています。
睡眠は周期的に現れる生理現象であり、概日リズムの一部と考えることができます。動物にとって睡眠は必須であり、睡眠に問題が生じると肉体的・精神的に不調を生じます。基本的に全動物に存在すると考えられているものの、いまだにその制御機序は判然としません。本研究室では、複雑化した睡眠制御をシンプルに理解し、その本質を見極めることを目指しています。使用する動物は、モデル生物であるキイロショウジョウバエに加え、刺胞動物のヒドラです。ヒドラは進化的に脳を獲得する以前の動物群に属しますが、眠るということを我々は見出しました(Kanaya et al., 2020)。ヒドラとショウジョウバエのそれぞれの利点を生かし、あえて『下等』な生物から睡眠を紐解くことを目指しています。
睡眠研究は主にヒトやマウスなどの哺乳動物で展開されており、直接的に役に立つような有益な成果が多数報告されています。その一方で、睡眠制御の分子機構の詳細を紐解くには、ヒトを含めた哺乳類のような『高等』な生物をモデルとした場合にはとても大変です。そこで本研究室では、睡眠研究に適したよりシンプルな生物を、新たなモデル系として導入することを目指しています。ちなみに刺胞動物のヒドラの睡眠研究はその成果の一部です。さまざまなモデル系から、睡眠の本質が見抜けるのではないかと期待しています。
准教授(P.I.)
2017-2023: 九州大学基幹教育院自然科学実験系部門助教
2015-2017: 九州大学理学研究院生物科学部門助教
2012-2015: Northwestern University, Department of Neurobiology, Postdoctoral Fellow.
2009-2012: 日本学術振興会特別研究員(DC1)
2009-2012: 九州大学システム生命科学府システム生命科学専攻博士課程修了(博士(理学))