Tsukushi(TSK:ツクシ)は当研究室で同定し単離生成した分泌型タンパク質であり、命名されました。ツクシの由来は、ニワトリ初期胚における発現様式が日本固有の植物であるツクシによく似ていたことから名付けられました。TSKはニワトリの初期発生において重要な役割を担うTGF-β、Notch、FGFなど様々なシグナル経路と相互作用する興味深い因子で、正常な胚発生に大きく貢献していることが考えられています(Ohta et al., 2004; Ohta et al., 2006:Kuriyama et al., 2006)
TSKはニワトリ初期胚の眼において毛様体と網膜幹細胞において発現がみられ、眼の形成に関与し、Wntシグナルを阻害することによって網膜幹細胞の増殖と分化を制御している(Ohta et al., 2011)。さらにマウスの脳においては、嗅球と脳の神経幹細胞ニッチが存在する側脳室と海馬歯状回において発現し、さらにTSK欠損型マウスでは、水頭症様に脳室が拡大する。TSKはマウスの脳においても同様に神経幹細胞ニッチの制御因子として働くと考えています (Ito et al., under the review)。
TSK欠損型マウスを解析することによって、TSKは神経ネットワーク形成に関与すること(Ito et al 2010; Hossain et al 2013)、毛幹細胞の発達と肌の創傷治癒に関与すること(zniimori et al 2012)、また、TSKは細胞外メディエーターとしてさまざまな現象を引き起こし、細胞外ドメインにおけるさまざまなシグナル伝達を制御していると報告されています。