基幹教育院について

About Faculty of Arts and Science,Kyushu University

教員紹介

福田 千鶴教授 Chizuru Fukuda

専門分野
近世日本史
2014年4月に九州大学基幹教育院に着任しました。九州大学文学部の卒業生です。大学院も九州大学に進学しました。六本松教養部、箱崎キャンパスで青春を過ごした世代として、両キャンパスの消滅は寂しさで一杯ですが、次々と新しい建物が増えていく伊都キャンパスの成長をみていくことは、楽しみの一つになっています。

  基幹教育では、文系ディシプリン科目の歴史学入門を担当しています。ということで、私の専門は歴史学、とくに日本近世史、そのなかでも江戸時代の成立期が得意分野です。現在は、文部科学省科学研究費基盤研究Aに採択され、「日本列島における鷹・鷹場と環境に関する総合的研究」というテーマで、全国の研究メンバーとともに鷹狩文化が日本列島上の環境に与えた歴史的意義についての検討を進めています。

  江戸時代に最上の獲物とされたツルは将軍に献上する目的で保護されており、ツルを捉えた鷹は「鶴捉の鷹」として珍重されました。その鷹狩文化は江戸幕府の崩壊後に急速に失われ、鶴や鷹も乱獲により絶滅寸前にまで陥りました。現在は環境保護活動により、次第にその数を増やしつつありますが、これらのことをみても日本列島上のあちらこちらで鶴や鷹をみることができるという自然環境は、決して自然に任せたままで成立していたわけではないことがわかります。

  2017年9月には、日本の鷹狩文化のルーツといわれるモンゴル・バヤンウルギー県のカザフ民族の鷹狩の実地調査に出かけました。掲載写真は、その時に私がイヌワシを据えさせてもらった時のものです。毎日、変わらぬ生活を送るカザフの遊牧民の暮らしは穏やかで、進歩や変化を追い求めて時間に追われる現代日本人の生活を振り返るよい機会となりましたが、そうした遊牧民の暮らしはあと50年も続かないといわれており、そのなかでカザフの鷹狩文化の伝統をいかに守っていくかが課題となっています。日本の鷹狩文化も一部の人々の努力によって伝承されていますが、その継承は厳しい状況下にあります。

  なお、カザフの場合は、大型のイヌワシを用いて狐やウサギなどの小動物を捕獲するので、鷲狩・鷲使いといった方がよいかもしれません。日本の鷹狩では、ハイタカやオオタカといった小型の鷹を用いて主に鳥を捕獲します。現在、日本のイヌワシは絶滅危惧種として保護活動がおこなわれていますが、日本列島上にイヌワシが生息していながら、なぜ日本では鷲ではなく鷹による狩猟が主流となったのか。そのようなことすらまだわかっていません。

  このように鷹狩文化を通じて歴史的に環境を考えることで、現代社会が抱える環境問題にも新たな知を発信していきたいと考えています。また、課題協学の授業を通じても、そうした観点から学生のみなさんとともに考えることで、楽しいアクティブな時間が共有できればと思っています。 
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