基幹教育院について

About Faculty of Arts and Science,Kyushu University

教員紹介

内田 竜也准教授 Tatsuya Uchida

専門分野
有機合成化学
 私たちの身の回りには、化学繊維や塗料、有機ELなど非常に多くの化学物質があふれており、これらの化合物の生産を支える有機合成化学は、現代の社会生活を支える重要な科学技術の一つとなっている。大学進学時に化学を志したのは、化学がおもしろく感じたこともあったが、身の回りにあふれる化学物質を支える「化学」ってなんだろうと思ったことがきっかけであった。化学は、一説によれば錬金術がもとになっている学問とも言われ、分子が研究対象となっている。
 その様な化学の中で、200年ほど前までは、「生物に由来する化合物」を有機化合物と呼び、人工的に合成することはできないと考えられていた。しかし、1828年、ドイツの科学者フリードリッヒ・ヴェラーが無機化合物から初めて有機化合物を合成したことで、先の概念が打ち破られ、有機物を人工的に合成する研究が活発に行われてきた。その研究の流れが、私が専門とする有機合成化学である。今日の有機合成化学の研究対象は、炭素が入っている化合物すべてがその研究対象となっており、関連する分野も医学から宇宙産業まで極めて幅広い物となっている。そして、非常に複雑な化合物でも既存の手法を駆使することで合成することが可能となった。
 では、今日の有機合成化学に研究対象はないのだろうか?そうでは無い。既存の有機反応は、反応性や反応位置選択性の為に事前に反応点に活性化基を導入する必要があり、合成工程数の増加や活性化基に由来するゴミの副生を招いており、省資源化に重大な問題を抱えている。そこで、石油や石炭などの限りある資源を原料することの多い有機合成からも新たな手法を開発し、合成工程数の削減や省資源化を達成することは、持続的社会構築の観点からも重要である。
 そして、私は、これらの要求の解決のヒントが生体に隠されているのではないかと考えています。生物は、有機物の集合体であり、その体内で様々な物質生産を常圧・体温の温和な条件で行っている。そして、それらの原料の一部は、水や酸素、また二酸化炭素など地球上を循環している資源を活用している。これらの循環資源は、比較的安定な分子であり、化学的には活性化することが難しく、これまで合成反応には用いられていない。一方、生命は、その誕生からこれらの循環資源を活用し、その術を熟成してきている。だが、生体内の合成システムは複数の酵素が関与した複雑系であり、未だに人工的に再現することはできていない。しかし、その安定な分子を活性化するメカニズムや構造は、新たな合成法を開発する重要な鍵を私たちに与えている。そこで、私は生体内で各種合成に関与している酵素に、循環資源(水、酸素や窒素)を活性化するヒントを学び、生物を超える新たな合成法の開発に取り組んでいます。
 化学に限らず、研究は先人の知恵や自然に学び、そこから新たな課題を見出し、その解決法を提案し実現させていく活動です。その姿は、まさに基幹教育で掲げる「アクティブ・ラーナー 」です。基幹教育およびそれにつながる専攻教育を通じてアクティブ・ラーナーの育成にも尽力できるよう教育、そして研究に取り組んでいます。
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