基幹教育院について

About Faculty of Arts and Science,Kyushu University

教員紹介

木附 晃実准教授 Akinori Kitsuki

専門分野
開発経済学
 私たちは暮らしていく上で様々な制約を受けながら、その中で自由に生活をしていると考えることができます。例えばスーパーに行って買い物をする時、限られた予算の中で何をどれだけ買うかを自由に決めることができます。また今日一日の時間の使い方も、24時間という限られた時間の中で何をするかを、やるべきことに優先順位を付けながら自由に決めることが出来ます。法律やモラルなどの規範や科学技術なども、私たちの選択を規定する重要な制約の一部と捉えることが出来、また、逆にそれらを所与とした私達の選択の結果として、規範や科学技術などが変化するダイナミズムが生まれるかもしれません。経済学とは、人々がどういう制約に直面しながらその中でどういう選択をし、各人それぞれの選択の結果として社会がどのように動いていくのかを考えることにより、より良い社会を目指していく学問です。
 私が専門としている開発経済学は、発展途上国の農業問題や貧困問題を経済学の立場から研究をする学問領域です。私にとっての開発経済学の醍醐味の一つは、なんといってもフィールドワークです。現在はザンビアの農村やインド・ムンバイのスラム街、インドネシアの電気の通っていない地域における人々の生活に関するプロジェクトに従事しているのですが、そこに住んでいる人達と話しながら、その人達がどういう制約に直面し、何を考えどう生活しているのかを教えてもらい、そこの地域に住む人達の生活がより良くなるためにはどうすれば良いのかを考えています。また、開発経済学が様々な学問領域と交わっている点も大きな醍醐味の一つです。経済学というと文系の学問というイメージを持つ人も多いと思いますが、様々な要因が交錯する複雑な社会を記述する言語として、日本語や英語とともに数学(「数字」ではありません)もよく用います。また、フィールドワークで得た着想や構築した理論が思い込みではないかを確認するため、家計調査などで得た定量的なデータを用いて統計的な検定も行います。個人個人の性格や偶然の思い付きなど、人々の選択を決定する要因の多くが数字で表すことが出来ない中で統計処理をいかに行うかが、我々の腕の見せ所です。また、途上国での人々の生活を語る上で欠かせない伝統的な地域の慣習や共同体などに関する知見の多くは、文化人類学や社会学の影響を強く受けてきました。また、より良い社会とは何か、を考える上で哲学の知見も欠かせません。さらに近年では、人々の選択を理解する上で、経済学と心理学や脳科学との融合も非常に活発な研究領域です。これら幅広い領域全てを一人でカバーすることは出来ませんが、文理の枠や研究分野に捉われることなく、色々な人と自由に研究できたらいいなと考えています。
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