基幹教育院について

About Faculty of Arts and Science,Kyushu University

教員紹介

有賀 智子准教授 Tomoko Ariga

専門分野
素粒子実験
 ニュートリノは素粒子標準理論の素粒子の一つで電荷0、質量0の粒子と記述されてきた。しかし、ニュートリノ振動の発見により質量を持つことが分かり、その特異な性質から、素粒子標準理論を超える未知の枠組みの解明への鍵となることが期待されている。3世代ある中でもタウニュートリノについては、その検出の技術的困難さから実験データが少なく、その性質を調べる高精度の測定が求められる。
 私は2017年に九州大学に着任し、ニュートリノについての基礎データの測定と新物理探索のため、欧州原子核研究機構(CERN)の加速器を用いた実験的研究を実施している。LHC-FASER実験におけるFASERνの共同プロジェクトリーダーおよびNA65実験の副代表として国際共同研究を牽引している。
 国際共同実験FASERは、CERNにある世界最大のハドロン衝突型加速器(LHC)の陽子衝突点の超前方に検出器を設置して軽い長寿命の未知粒子を探索することを目的として提案された実験である。私は、この実験に初期から参画し、LHCを用いて未開拓のエネルギー領域でのニュートリノ研究が可能なことに注目した。LHCにおいて3世代ニュートリノを研究する実験(FASERν)を提案し、2019年12月にCERNによる正式承認を受けた。高エネルギー領域でのニュートリノ反応断面積測定は未開拓であり、現在の加速器によって生成できる最高のエネルギーのニュートリノ反応を研究する新しい試みである。これまでに2018年パイロットランデータの解析を実施してLHCからのニュートリノの初観測に向けた反応候補の検出に成功し、将来実験への道筋をつけた。現在は、2022-2024年のLHC Run 3でのニュートリノ照射実験に向けて、約1.1トンのFASERν検出器及び解析体制の構築を主導している。この実験を基に、その後の2027年頃からの高輝度LHCでの高統計タウニュートリノ測定に向けたFASERν2のセットアップ・検出器デザインもまとめている。FASER2、FASERν2等を含む超前方研究のためのプラットフォームForward Physics Facility構想に参画し、プロポーザルに向けた論文の執筆を行っている。これらの研究計画を実現して、ユニークな基礎データを提供するとともに、コライダーを用いたニュートリノ実験への道を拓いていきたいと考えている。

写真:FASER Collaborationのメンバーの一部(有賀先生:写真一番左)
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