基幹教育院について

About Faculty of Arts and Science,Kyushu University

教員紹介

武田 友加准教授 Yuka Takeda

専門分野
応用経済学
専門:ロシアの貧困・不平等,労働市場,開発経済学
担当科目:経済学入門,基幹教育セミナー,課題協学科目(以上,基幹教育),開発経済学(共創学部)

 ソ連が新生ロシアとなり,計画経済から市場経済へと移行を開始してから30年ほどの月日が流れました.私が開発経済学の視座からロシア経済研究を始めた時,ソ連はすでに崩壊し新生ロシアが誕生していましたが,移行期の混沌という影がロシアの人々の生活の中にまだ残っていたように思います.現在のロシアは市場が機能するという意味では「普通の国」になり全く「別人」のようにもなりましたが,それでも部分的にソ連時代の名残と言える独特な制度や慣習が残っています.このような社会や人々の慣習を踏まえつつ,大規模家計調査のミクロデータ(個票データ)を使ったミクロ計量アプローチに基づき,ロシアの貧困・不平等を実証的に分析し,社会政策へのインプリケーションを探るというのが,私の一貫した研究関心です.

 従来の一連の研究に加え,2020年6月から「北極域研究加速プロジェクト」(ArCS II: Arctic Challenge for Sustainability II)に参画しています1).ArCS IIは北極域研究のナショナルフラッグシッププロジェクトで,2020年6月から2025年3月にかけて,国立極地研究所,海洋研究開発機構(JAMSTEC),北海道大学が中心となって実施されています.ArCS IIには,4つの戦略課題の下に,大気課題,気候予測課題,社会文化課題,国際法制度課題など11の研究課題があり,私は社会文化課題におけるサブ課題「エネルギー資源開発と地域経済」で活動しています.社会文化課題は,戦略目標3「北極域における自然環境の変化が人間社会に与える影響の評価」に属する研究課題の一つであり,私自身は,これまで研究してきたウェルビーイングをより多面的に捉え,ロシア北方域の住民の生活水準と健康の関係を詳らかにしたいと少しずつ研究しているところです.本プロジェクトでは分野横断研究会も企画され,これまで関わることのなかった分野の研究に触れることが楽しく刺激にもなっています.

 ArCS IIのような分野横断研究では,異分野の研究での知見や多様な考え・見解に耳を傾け,それらを自らの研究関心と結びつけていくことが大切です.こういった研究の営みや姿勢は,規模は全く違いますが,自身が担当する課題協学科目などにも通じる点があります.研究活動で得た知見や経験を教育活動にも生かし,自立的に学び自ら問いを立てる力を獲得できるよう,学生たちをサポートしていきたいと思います.

注:
1)ArCS IIの詳細は以下のサイトを参照:https://www.nipr.ac.jp/arcs2/about/

<写真(武田撮影)> ヨーロッパ・ロシア北西部に位置するヴォログダ州のとある町の白い教会.教会は人々を繋ぐ役割も果たしています.因みに,ヴォログダ州は酪農が盛んで,Вологодское масло(ヴォログダ・バター)が有名です(ロシアのバターは甘く,とても美味しい).もう一つ余談をすると,チーズのように分厚く切ったバターとイクラをパンにのせて食べるのが,ロシアのお祝いの際の定番料理です.
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