基幹教育院について

About Faculty of Arts and Science,Kyushu University

教員紹介

大河内 豊教授 Yutaka Ookouchi

専門分野
素粒子物理学
自然科学理論系部門の大河内豊です.2013年に基幹教育院に着任してから,主に基幹教育を担当してきました.専門は素粒子論と呼ばれる基礎研究で,物質のミクロな性質を明らかにする領域です.特に,弦理論や場の理論を用いた初期宇宙の研究に興味を持っています.素粒子のようなミクロなスケールを扱う物理が,どのように宇宙というマクロな物理を記述するのか疑問に思う人もいるでしょう.実は,宇宙は時間を遡ると,今とは全く異なる状態で,小さな領域に多くの素粒子がぎっしり詰まった状態であったと考えられています.その小さな領域における素粒子の振る舞いがわかれば,自ずと初期宇宙について知ることができるというわけです.
 
研究を続けていてよく驚くことは,基礎物理を突き詰めていくことで,ある種哲学的とも思えるような問いにすら,部分的にではあるものの答えることができるようになることです.例えば,なぜ身の周りのものが存在するのか?宇宙は永遠なのか?時間や空間は全ての人に共通なのか?などです.特に,現在直面している興味深いテーマは,宇宙はひとつなのか?ということです.我々が手にしている最良の理論と実験データを組み合わせると,どうやら我々の宇宙は準安定状態にあり,有限の時間で別の宇宙へと崩壊することが示唆されています.準安定状態の一例は水の過冷却現象で,−5度程度で水をゆっくり冷やすと,本来なら固まるはずの温度なのに水の状態を保つことがあります.これに外から刺激を加えると,一瞬で凍りつくことが知られていますが,我々の宇宙にも同様のことが起こりうるということです.直ぐに起こるわけではありませんが,いつか別の宇宙へと崩壊するかもしれません.誰も我々宇宙に外から強い刺激を加えないことを祈るのみです(笑).
 
基幹教育では,物理以外の先生とご一緒させていただくことが多く,そこでのやりとりから視野が広がることがよくあります.その度に,やはり私は偏っていたのだと痛感しますし,それらを吸収するたびに,少しは真っ当な教員になった気にもなります(笑).また,課題協学科目や基幹教育セミナーでは,物理以外の学生との出会いがたくさんあり,大変刺激的です.さまざまな視点から(歴史,政治,身の回りの生活など)物理学を見直すよい機会ともなっています.こうした学びを基幹教育に還元することが,私の現在の課題です.
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