基幹教育院について

About Faculty of Arts and Science,Kyushu University

教員紹介

福井 徳朗助教 Tokuro Fukui

専門分野
原子核理論
 唐突ですが、あなたと友人の2人でキャッチボールをすることをイメージしてください。サッカーやバスケットボールでのパス交換でもよいです。2人でボールを渡して受け取ることは特別に難しくはないと思います。次に3人目の友人が参加してきました。3人でボールを交換するとやや複雑になった印象はないでしょうか?ボールの受け渡しの選択肢が増えるというだけでなく、3人目の存在によって他2人が影響を受ける、少し大げさに言えば、質的に新しい自由度が生まれるということが起こりそうです。

 実は同様のことが、私が研究している極微な原子核の世界(0.000000000000001メートルの世界!)でも起こっています。原子核の世界の構成員は核子と呼ばれ、粒子でもあり波でもある不思議なヤツです。さて、核子くんが2人いると、彼らには「2核子力」という力が働いて、互いに影響を及ぼし合っています。面白いことに、この力は中間子と呼ばれる“ボール”の交換で説明できます。2核子力は複雑な性質を持っていますが、先人たちの長年の研究で全体像が明らかになってきました。一方、核子くんが3人いると、「3核子力」という新しい力が働きます。これは2核子力の単純な組み合わせでは説明できず、3人の核子くんたちは複数の“ボール”を同時に交換することもあるようです。そんな3核子力は未だ謎だらけです。3核子力の強さ、そして多くの核子くんたちが集まったときに彼らが3核子力をどう感じるのかということは未解明です。私はこの謎を解くために先鋭的な理論とスーパーコンピュータを駆使して研究しています。

 ところで、核子を人のように扱っていますが、擬人化が好きな物理屋はたくさんいます。特に我々原子核屋は数千種類存在する原子核の個性に注目していて、似ていることころ(普遍性)や違うところ(特異性)を見つけることに面白みを感じます。原子核の一つ一つの個性を見つけるように、学生たちそれぞれの特長に寄り添うことは物理の研究と無縁ではない気がしています。
 
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