基幹教育院について

About Faculty of Arts and Science,Kyushu University

教員紹介

権 寧魯教授 Yasuro Gon

専門分野
整数論
 2023年春に基幹教育院に着任いたしました。専門は「整数論」という“数”のもつ様々な性質について研究する数学の一分野です。整数論には多くの「ゼータ関数」と呼ばれる重要な複素関数(複素数を変数とする関数)が現れます。例えば、最も基本的なゼータ関数である“リーマンゼータ関数”の解析的な性質を詳しく調べることによって、「素数定理:与えられた実数 x を超えない素数の個数を π(x)  とする。x→∞ としたとき、π(x)  と の比は1に近づく。」が1896年に証明されました。リーマンゼータ関数の“非自明零点”に関する有名な未解決問題である「リーマン予想;1859年」が証明されると、この素数定理がより“精密”になることが知られています。
 リーマンゼータ関数と同様に重要と思われるゼータ関数のひとつにセルバーグゼータ関数(セルバーグ;1956年)があります。「リーマン面」と呼ばれるある種の“曲面”に対して、セルバーグゼータ関数は定義されます。このゼータ関数も複素数平面全体に解析接続されて、リーマン予想の類似を満たすことが知られています。素数を数える素数定理の代わりに、素測地線を数える“素測地線定理”が証明されます。ここで、素測地線とはリーマン面上の2点を結ぶ最短距離を実現する曲線で、多重巻きになっていないものです。セルバーグゼータ関数の解析接続は、“セルバーグ跡公式”(ある種の積分で定義される作用素の固有値の和に関する定理)を用いてその対数微分の解析接続を示すのですが、その表示から非自明零点が一直線上に並んでいる様子がわかり大変美しいです。
 しかしながら、私が関心を持っている、より一般の階数が高い局所対称空間のセルバーグゼータ関数についてはわかっていることが少なく、解明されていない謎が多いです。セルバーグゼータ関数に限らず、整数論にはまだまだ“生態”のよくわかっていないゼータ関数がたくさん“生息”しています。未知のゼータ関数が“何を数えているのか”少しでもわかったらいいなと思いながら研究を続けています。


<写真>
共同研究の為に訪れたドイツ・テュービンゲン大学で見かけた某教授のバイクです。
フロントフェンダーの中心部左から下部に向けて描かれいてる定理が「セルバーグ跡公式」、中心部右から下部に向けて描かれているのが「素数定理」です。この二つの定理への深い敬愛の念が感じられます。

 
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