基幹教育院について

About Faculty of Arts and Science,Kyushu University

教員紹介

中里 健一郎准教授 Ken'ichiro Nakazato

専門分野
宇宙物理学理論
2015年10月に九州大学基幹教育院に着任しました。それまで九州大学には研究会で足を運んだことがあるくらいで(それも今は無き箱崎キャンパスでした)あまりご縁のない大学でしたが、気づけば学部・大学院と在学していた出身大学に匹敵する期間をすでに九州大学で過ごしており、時の流れの速さに驚いています。

専門は宇宙物理学、とくに重い星が一生の最期に起こす爆発現象(超新星爆発)に関係するテーマを理論的に研究しています。炭素や酸素、鉄といった私たちの身の回りにある元素の多くは、星の内部で起こる核融合反応によって作られ、超新星爆発によって宇宙空間にばらまかれます。ばらまかれた物質が新たな星を作り、惑星や生命の材料にもなります。よく「人は死んだら星になる」と言いますが、実際には「星が死んで人間が生まれた」のです。

宇宙物理学は、物理学のごった煮とも言われ、研究を進めていると実に多くの物理法則が顔を出します。最近では化学や生物学といった分野から宇宙にアプローチする研究も盛んです。また私自身は、超新星爆発に伴って放出されるニュートリノと呼ばれる素粒子に興味を持って理論的な側面から研究していますが、実際にこのニュートリノを検出する実験では、検出器に用いる超純水や有機溶媒の精製に化学の知識が欠かせません。

基幹教育では、「基幹教育セミナー」や「課題協学科目」などのほかに、「地球と宇宙の科学」という理系ディシプリン(教養系)科目を担当しています。文科系の学生さんの受講も多く、この分野に興味を持つ人がたくさんいることはうれしいのですが、毎回の授業の終わりに書いてもらう「ふりかえり」を読むと、関連する物理学や化学には馴染みがない・苦手意識を持っているという人も少なくないようです。

自分の専門にとらわれず幅広い視野を持つ学生を育てることは基幹教育の狙いの1つです。地球や宇宙に関する話題は自然科学のなかでは人気かもしれませんが、授業では一般受けの良い話だけでなく、こうした最先端の研究が幅広い分野の基礎によって支えられていることも、もともとの興味を失わせない程度に強調したいと心がけています。

写真は伊都キャンパスに据えられた山川健次郎初代総長の胸像です。台座に刻まれた「修養が広くなければ完全な士と云ふ可からず」の言葉は、基幹教育にも通じるものであり、私自身が研究の際に意識していることでもあります。
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