基幹教育院について

About Faculty of Arts and Science,Kyushu University

教員紹介

田村 茂彦教授 Shigehiko Tamura

専門分野
分子細胞生物学
 私が本学の理学研究院・生物科学部門から基幹教育院へ異動してきてから早いもので12年近くになります。当初は手探りのような状態でしたが、教育そして研究においても何とか順調に進めてきているのは関係の先生方、事務の方々のサポートのおかげだと感謝しております。さて、教員紹介を書くようにとのことですので、私がこれまでに取り組んできた研究や恩師から影響を受けた教えとして今でも大切にしていることについて、若かりし頃の昔話として書き留めてみます。まずは大昔に遡りますが、約50年近く前の小学校卒業式にて恩師から頂いた色紙を今でも大切にし、居室の目立つ場所に鎮座させています。良く言えば物持ちが良いのですが、かなり変な奴かもしれません。そこには「誠実にして真実を求む」と書かれていて、生命科学における真理を追求する心構えとして今でも大切にしています。
 私は本学の理学部生物学科出身で、当時の指導教授からは「ヘビ毒の一次構造解析」を卒論テーマとして生化学の考え方を学びました。現在はシステム生命科学府にて分子細胞生物学研究室を主宰していますが、私の研究の基礎は生化学だと思っています。大学院からは大阪大学へ移り、「胃酸分泌酵素に関する分子生物学的な研究」に携わりました。この大学院時代の恩師からの言葉として覚えているのは「何事にも馬鹿になって取り組め」です。この言葉が意味するところは、後年、スティーブジョブズによってなされた有名な演説の一節である「Stay hungry, stay foolish」にも繋がると勝手に解釈し、現在の私の研究室の学生たちへも同様のことを教示しているつもりです。その後、阪大での職を辞して米国へ移り、ホフマン・ラ・ロシュという製薬会社の非営利研究所である米国ロシュ分子生物学研究所にて、「神経伝達物質輸送体に対する薬物作用機構」の研究に没頭していました。当時は企業がスポンサーとなった非営利の研究機関が多く存在していましたが、近年では残念ながら目先の利益を追求するあまりこのような研究機関は日本も含めて殆ど見かけなくなりました。当時のロシュもその時流に逆らえず、研究所の大きな方針転換(リストラ)に伴いロシュ時代のボスに連れられてイスラエル国テルアビブ大学のポスドクとして新たな研究生活を始めることとなりました。これは今から28年前のことですが、当時からイスラム原理主義組織ハマスが活動しており、特に私が帰国し本学の理学部に着任する頃から市場やバスを標的とした爆弾テロが活発になってきた時期です。最近のハマスは当時と比べてもさらに危険度が増してしまったようでこの情勢を非常に危惧しています。
 本学に着任後は一貫して、「ペルオキシソーム形成とその障害・制御メカニズムの解明」に取り組んでいますが、“謙虚で誠実な姿勢”を保ち、そして学生たちへは良い意味での“影響”を与えられる教員そして研究者でありたいと思っています。

写真
 テルアビブ大学の正門付近から見た大学の一部です。お店や公共の場所などと同様に大学の敷地内へ入るには警備員にカバン等の中身を見せて危険なもの(銃や爆弾)を持っていないことを示す必要があります。ユダヤ教の安息日(シャバット)やコーシャーなど異なる文化や制度に戸惑うことが多く、そして危険なイメージもありますが私にとっては非常に魅力的で懐かしい国でもあります。パレスチナ問題の解決は困難でしょうけれど、見かけ上だけでも平穏な日々が早く戻って来ることを願っています。

 
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