基幹教育院について

About Faculty of Arts and Science,Kyushu University

教員紹介

伊藤 太一准教授 Taichi Itoh

専門分野
時間生物学
 私は本学の出身であり、学生時代には六本松キャンパスで低年次教育(現在の基幹教育)を受けました。当時、学科の研究室は主に箱崎キャンパスに配置されていましたが、私が所属していた研究室は珍しく六本松キャンパスにあり、長い期間をそこで過ごしました。今振り返ると、その頃から基幹教育との縁があったのかもしれません。
 六本松キャンパスでの研究室生活では、ショウジョウバエを用いた概日リズムの分子機構の解明に取り組みました。概日リズムとは、生物が24時間周期で行動や生理機能を変化させる現象であり、体内の時計遺伝子がこれを調整しています。このリズムは、睡眠・覚醒、ホルモン分泌、体温調節などに深く関わっており、2017年にはこの分野でノーベル生理学・医学賞が授与されるなど、多くの注目を集めました。
 博士号取得後、アメリカのシカゴ近郊にあるノースウェスタン大学で博士研究員として研究を続けました。上手くいかないことの方が多かったですが、多くの優れた研究者と出会えたことは、私のキャリア形成において非常に重要な基盤となりました。
 その後、縁あって本学に教員として戻ることができました。帰国後に訪れた六本松は、以前とは大きく変わり、おしゃれな街へと変貌しており、その変化には驚きを覚えました。
 現在も引き続き、概日リズムや睡眠の研究を行っています。睡眠の制御は非常に複雑な現象であり、私はショウジョウバエやヒドラなど、より「下等」な生物を利用することで、この複雑な現象をシンプルに理解し、睡眠制御の本質やその意義を探求することに挑戦しています。
 私が教育で大切にしているのは、「興味と好奇心を持ち続けること」です。学生たちには、自分の興味を追求し、疑問を持つことの重要性を伝えています。学問の世界は広大で、時には困難な状況に直面することもありますが、興味と好奇心があれば、その困難を乗り越えられると信じています。また、「実践を通じて学ぶこと」の重要性も強調しています。教科書を読み込むだけでなく、実験や体験を通じて実際の現象を観察し、自らの目で確かめることが、より深い理解と発見に繋がると考えています。
 大学生は生活リズムが乱れがちですが、規則正しい生活を心がけることが大切です。概日リズムは身体のさまざまな機能に関与しており、そのリズムを整えることで、肉体的・精神的な健康に多大な影響を与えます。整える方法は非常にシンプルで、朝日を浴び、朝食をしっかり取るだけです。高価な器具を使ったハードなトレーニングよりも、はるかに手軽で効果的だと思います。ぜひ実践して、その効果を実感してみてください。

写真:ノースウェスタン大学のメインキャンパス内での写真(人物は本人)。シカゴといえば雪が有名ですが、今回写真を整理してみたところ、冬の写真が意外と少ないことに気付きました。おそらく冬は寒過ぎて、写真を撮る余裕がなかったのだと思います。
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