基幹教育院について

About Faculty of Arts and Science,Kyushu University

教員紹介

野瀬 健教授 Takeru Nose

専門分野
生物化学
まずは、私がどのように研究を始め、今に至ったかをご紹介します。
私は九州大学理学部化学科に入学し、生物化学研究室で研究生活をスタートしました。当時、研究室はちょうどペプチド合成化学からペプチド科学、タンパク質化学へと研究の中心を移している時期で、学部4年生のときには蛇毒(ヒメハブ)に含まれる酵素タンパク質の研究テーマを、修士課程に入るころには血小板を凝集させるペプチドの合成研究、さらに修士2年生のころには核磁気共鳴(NMR)を用いたペプチドや酵素の立体構造解析、博士課程では、当時とても高価だった分子モデリングにも挑戦するなど、多様なテーマを経験する機会を得ました。指導教員の先生方が私の興味を尊重して下さったことに大変感謝しています。さらに、実験室で長時間過ごし、先輩や仲間と切磋琢磨しながら研究に没頭した日々は、とても充実していて、今でも大切な思い出です。

現在は、基幹教育院で「エラスチン様ペプチド(elastin-like peptide: ELP)」の研究を中心に行っています。ELPは、わずか5つのアミノ酸の繰り返しという単純な配列を持ちながら、温度変化に応じて溶けたり沈殿したり、ゲル状になったりする不思議な性質を示します。さらに沈殿する過程で有害な化学物質を取り込み、溶液から除去できるといった機能もあり、環境浄化や医療材料など幅広い応用の可能性を秘めています。

この研究を通じて日々感じるのは、「ペプチドが水に溶けるとはどういうことか」「なぜある条件で溶けなくなるのか」「アミノ酸配列を変えるとどのように性質が変わるのか」といった、化学の基本に立ち返る面白さです。特に最近は、どれだけ配列を短くしても機能を持たせられるか、いかにシンプルな方法でペプチドを調製できるかに学生と一緒に頭を悩ませながら挑戦しています。単純に見えるテーマほど、実際に実験すると予想もしなかった結果が得られる――その瞬間が研究の醍醐味であり、とても楽しく感じるところです。

一方で、最近は大学運営や管理の仕事も増え、研究室にいる時間はとても限られてきました。しかし、さまざまな研究室での活動から得られる学生の指導経験をもとに基幹教育、大学院基幹教育を考え、大学教育を改善していくという姿勢を大切にしていこうと考え、研究室にチームコミュニケーションツールを導入するなどの工夫を続けています。研究の場と教育の場を区別することなく行き来することで、基幹教育院の理念である「研究を背景とした教育」と「現場レベルでの教育改善」を実践し続けたいと考えています。
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