基幹教育院について

About Faculty of Arts and Science,Kyushu University

教員紹介

専門分野
 2016年秋に九州大学基幹教育院に着任いたしました。専門は西洋美術史、特に17-18世紀のオランダ絵画で、なかでもフェルメールが描いたような手紙を読む女、音楽を奏でる女など、日常生活を題材とした「風俗画」を研究対象としています。
 基幹教育では、セミナーと課題協学科目に加え、文系ディシプリン科目「芸術学入門」、高年次科目「芸術学概論」を担当しています。「芸術学入門」では、美術になじみのない学生も多いため、美術史の基礎と最先端の研究をどう伝えるか、日々模索しています。
 以前、オランダのアムステルダム大学に勤めていた間、美術史の授業を担当する機会があり、視覚体験を基礎とした少人数の教授法を実践しました。1年生の演習では、パリのルーヴル美術館の絵画を学生が各々1点選び、下調べのうえ、実際に美術館を訪れ、絵画を前に口頭発表・議論を行いました。学生は本物を前に自分の目で「絵をどう見るのか」を考え、他人に伝えるという美術史の面白さと難しさを経験しましたが、と同時に、それは学生にとって、世界の文化遺産である芸術作品に自ら対峙し学ぶという、緊張感と喜びを味わう瞬間でもありました。
 履修生が100人を数える伊都の講義でも、こうした感動と臨場感を少しでも伝えたいと考えています。各自で美術館を訪れ、作品を記述するレポートを課し、また講義室でも、「ひとつの見方」としての美術史の方法論を示した上で、「自分ではどう見るのか」と、問いを投げかける授業を目指しています。E-learningシステムMoodleでの課題や小テストも実施しますが、実際に学生にマイクを渡すと、皆一斉に耳を傾け、スライドの絵を凝視し、「他の人にはこう見えるのか」と驚く様子も見られます。美術史は膨大な知識の蓄積が必須な学問である一方、自らの感性による芸術体験から自らの見方を率直に問われるという点で、アクティブ・ラーナーの姿勢の育成にもつながっていくのかもしれません。文理混合の履修生の感想文やレポートに、キラリと光る感性を見出し、人文学の豊かな可能性を実感しながら、今後も「絵の見方」を探っていきたいと考えています。

出典:『基幹教育院ニューズレター』第5号(2016夏)
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