基幹教育院について

About Faculty of Arts and Science,Kyushu University

教員紹介

安田 章人准教授 Akito Yasuda

専門分野
環境社会学
みなさんは、アフリカと聞くと、なにを思い描くでしょうか。
地平線を埋め尽くすヌー、アカシアの葉をはむキリン、草むらに身を潜めるライオン。
おそらく、雄大なサバンナに生息する野生動物の姿を真っ先に想像されたと思います。
あるいは、ヘミングウェイが好きな方であれば、アフリカにおける狩猟旅行を題材とした「キリマンジャロの雪」を思い出されたかもしれません。
 では、「アフリカでは野生動物を『護る』ためには、それを娯楽のために『殺す』狩猟旅行、いわゆるスポーツハンティングが有効であると評価されている」と聞くと、多くの人が疑念を抱くでしょう。つまり、「殺すことが護ることにつながるのか」と。
それは、狩猟規則や捕獲枠で管理され、多額の収益や雇用を生み出すスポーツハンティングは、「経済的な豊かさと生態的な持続可能性」を保障するため、野生動物保全に有効なツールであると評価されているためです。
 しかし、「持続可能性」とは、経済的あるいは生態学的な観点のみによって評価できるものでしょうか。また、スポーツハンティングが地域社会にもたらす影響とは、肯定的なものだけでしょうか。わたしは、2004年からアフリカ中央部・カメルーン共和国北部でフィールドワークをおこない、スポーツハンティングと地域社会の関係を題材に、「持続可能性」について、環境社会学の観点から研究をおこなってきました。
 もうひとつの研究テーマは、「生き物の命を奪うこと」に関する研究です。「スポーツハンティングとは、娯楽のために野生動物を狩ることである」と聞いて、多くの方は、「なんという残酷なことか」あるいは「食べないなら殺すべきではない」と思われたでしょう。では、なぜ食べるためならよいのでしょうか。その動物にとっては、殺されることには違いはないのに。これに関しては、実は、私自身も国内でハンターとなり、実践的研究をおこなっているところです。この狩猟活動を教育に生かすために、2014年に学生とともに、「九州大学・狩猟研究会」を立ち上げました。2018年に大学公認サークルとなった狩猟研究会は、決して、単に狩猟を楽しむ団体ではなく、「現代社会にとって『縁遠い』狩猟や解体など、食肉に関わる活動を実際に自らおこなうことで、『人間は、自然や他の生き物とどのようにして生きていくべきか』について、実践的に探求すること」を目的としています。
 スポーツハンティングにおける持続可能性、そして命を奪うことについて実証的に考えると、現代社会が抱える課題や、人間という存在の不思議が浮かび上がってきます。そして、多元性に満ちたそれらを正確に捉えるためには、創造的かつ批判的に吟味する幅広い視野が必要であることが見えてきます。
 こうした研究成果を活かして、基幹教育院の使命であるアクティブ・ラーナーの育成に尽力したいと考えています。


出典:『基幹教育ニューズレター』第1号(2014夏)

 
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