九州大学 基幹教育院 次世代型大学教育開発センター

九大AL教室(ICT活用)を開催しました

平成30年3月19日(月)九州大学アクティブラーニング教室「ICTを活用したアクティブラーニング環境を考える」を開催しました。

開催概要

開催案内(PDF) ポスター(PDF)

【日時】平成30年3月19日(月)13:00~15:30
【会場】
九州大学 伊都キャンパス センター3号館3105・3106

【定員】30名(先着順)
【参加費】無料
【対象】大学教職員、大学院生、ICTを用いた学習に関心のある教育関係者等。

【講師】山田政寛(九州大学 基幹教育院・准教授)

【セミナー概要】
大学において、効果的にアクティブラーニングを実施するためには、知識のインプット、インプットした知識を再構成する機会の設定、それを表現するサイクルを回すことが望ましいですが、1コマ90分という限りある時間の中でそれを効果的に行うには授業外学習とその環境を設置することが求められます。特にICTは授業外学習環境としてアクティブラーニングにおいて広く利用されています。本セミナーでは、アクティブラーニングにおける授業外学習環境としてICTを活用する方法について、事例を挙げながらレクチャーをし、自らの授業への適用について議論を通じて検討します。

開催報告

【参加者情報】
学外:15名(うち県外 6名)
学内:6名
合計:21名

【アンケート結果】

《満足度》
満足:5 概ね満足:7 どちらともいえない:0
やや不満足:0 不満足:0

《参考になった点》(抜粋)

  • 学生の負担にならない程度の反復学習や事前にICTを使った情報提供(Video等)を行うだけでも良いと思った。グループワークも、PCを活用すれば、板書の手間が省けるし、結果を電子データとして保存・共有が可能。また、夏休みに海外からの学生・講師を対象としたサマーセミナーを実施しているが、ビデオの事前配信やフィールドワーク時のスマホの活用も可能だと思った。
  • 21世紀型スキル、アクティブラーニングへの誤解、テキスト解析、マーカー解析など。
  • 色々なツールを紹介してもらったので、授業設計をして合うものを取り入れたい。
  • 授業実践している中で、環境作りの難しさが分かった。
  • 普段実施している手法が、他の授業にも応用できそうであることが分かった。
  • 普段からクリッカーを使っていますが、これを学生間のディスカッションにつなげることまではしていなかったので、やってみたいと思った。
  • Google classroom、Google form、Facebookなどの無料ツールも、もっと使って良いのだと思った。
  • 学習時間がのびればよいというわけではない、最初の授業デザインが重要というのは目からウロコだった。

《分からなかった点・もっと説明してほしかった点》(抜粋)

  • ICTの定義の説明が欲しかった。私の定義が狭かったので話が噛み合うまで時間がかかった気がした。
    【山田先生からの回答】ありがとうございます。ICTは情報通信技術、ツールという意味合いで使っていました。もし他の解釈がありましたら、教えて下さい。参考にさせて頂きたいと思います。
  • 福岡高校や糸島高校は、特別な環境下で行われていることなので、一般の高校での実施を元にして話をして欲しい。九州大学も特別な環境にあることを考えて欲しい。
    【山田先生からの回答】ありがとうございます。九大と共同研究をしている以上、そういう環境にはあるのですが、私のセミナーで言いたかったことはそういう特別な環境を入れましょうということではなく、世の中、いろんなツールが充実してきているが、それを効果的に使うには授業設計がとても大事ということです。ICTは、九大のシステムを使わなくても、無料で使えるようなツールは数多く公開されています。そのツールの特徴をつかんで、何を学習目標・教育目標とするのか、その目標に対して、どうツールを使うのかを考えてもらうヒントになればと思います。
    ※事務局による補足:セミナーでは、福岡高校や糸島高校でのICT活用の事例や山田先生の共同研究での事例が紹介されました。
  • ICTの効果のほかアクティブラーニングに関する有益な情報や解説、考え方を知ることができて当方の期待にマッチした内容だった。ICTを活用するにあたって今後の課題となりそうな気になったこととして、・いかに学生(グループ)のモチベーションを引き上げるか、・コミュニケーションに悩みや問題を抱えている学生やアクティブラーニングになじめない学生が混じっているケースでは精神的負担になるなど逆効果な面もあったりするのではないか、と思った。
    【山田先生からの回答】大変うれしく思います。また何かありましたら、ご相談下さればと思います。課題の点ですが、モチベーションについては、ICTそのものというよりも授業設計の話ではないかと思います。セミナーでもちょっと紹介しましたARCSモデル(※)はモチベーションを高めるための授業設計ですので、ぜひ参考にされてください。日本語版でもいろんな本が出ています。また2点目ですが、むしろそういう学生さんにこそICTがフィットする可能性が高いです。コミュニケーション不安の程度、状況にも寄るのですが、対面コミュニケーションが苦手(視線など)というレベルであれば、平易な電子掲示板など相手の顔が出ない形のツールを使うということも可能かと思います。むしろ他者からの存在が強く伝わらないが、個人のスペースで個人の作業と共同作業ができるICT活用の方がフィットする可能性もあると思われます。
    ※事務局による補足:「ARCSモデル」とは授業設計において学習意欲にシステム的にアプローチするモデルのことです。「A」「R」「C」「S」はそれぞれ、Attention(注意)、Relevance(関連性)、Confidence(自身)、Satisfaction(満足度)の頭文字です。
  • 質問1)ICTを活用したグループワークも実際の対面での仲間関係(コミュニティ)に依存するため、当該部分をブレイクスルーする手法。
    質問2)アメリカでは近年単純な勉強時間の量を測定することに意味がないという主張があるとの話があったが当該論文などを知りたい。
    【山田先生からの回答】ありがとうございます。質問1)につきましては、ランダムで組むような機能を併用するというのも手としてあると思います。だれと以前グループを組んだのか、記録しておいて、それに基づいて再度組み合わせるという手動にはなりますが、そういう方法もあると思います。仲間関係に関係なく、グループワークの質を高めるためには、グループワークに求める基準を細分化して、評価することもあると思います。タスクの分散、成果物の取り組みなど、詳細な定義が必要になるとは思いますが(私はそうしています)。質問2)に対してですが、単純な学習時間を見ることはあまり強い指標にならないとされているのは、学習の効率性の話があります。これは大阪大学 川嶋先生の論考(単位は「容器」にすぎない 学習を生み出す授業と課題の提供を)と首都大学東京 松田先生の解説記事(教学IR担当者はどのような指標を扱うのか[pdf])です。前者は総合的な学習時間ではなく、具体的な学習行動における時間を指標として考えるべきということ、後者は授業外学習の時間について評価するというものですが、効率的な学習を促すインストラクショナルデザインとの関係性も触れられており、その点からも単純な学習時間の総量というのはあまり参考にならないという判断がなされているのだと思われます。
  • 望月先生開発の、協調学習仕事量の可視化システムについて、興味がある。
    【山田先生からの回答】望月先生のシステムは今はたぶん使えなかったような気がします。スマートフォン版はなかったと思います。Flashでできているので、これからは使えなくなるかもしれません。ポイントはグループの状態を可視化するということですね。
    ※セミナーでは、協調学習の研究事例として、望月俊男先生(専修大学)によるCSCL(Computer-Supported Collaborative Learning)の研究が紹介されました。
  • 学び方と教え方の分析について、大変興味深かった。M2Bシステムそのものを、私の講義担当の学生300名ほどに使わせていただけないか。共同研究はできないか。(学力の差異による、学び活動の違いや行動分析など。)
    【山田先生からの回答】ありがとうございます。本学のラーニングアナリティクスセンターへお問い合わせください。
  • アクティブラーニングを考える良い機会になりました。ただ、本研修全体のゴールがやや曖昧で、グループワーク課題も含め、全体の設計が甘い印象を受けました。
    【山田先生からの回答】もっと時間があれば、先生方の授業設計までやってみるというところがやりたいのですが、ご所属の機関によって、使用できるICTに違いもあるでしょうし、難しいと判断し、今回はやや曖昧ですが、ICT活用の授業設計を意識するという点に話を留めました。本来はご所属機関のICT環境を把握した上で、こういうセミナーをすると効果的なので、何か後希望があれば、お気軽にお問い合わせください。
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