九州大学 基幹教育院 次世代型大学教育開発センター

ファシリテーション研修会を開催しました

平成30年5月2日(水)イノベーション教育セミナー「ファシリテーションを活かした学びの場づくり」を開催しました。授業や研修のみならず多くの場面で教員と学生、講師と受講生との間でインタラクティブな関係を築きつつ教育を展開することが求められています。場づくりや展開のプロセスといった授業デザインにおいては、ファシリテーションスキルを活用することが学生や受講生の理解度や納得感を高めるためにも必要な要素になります。今回のセミナーでは、ファシリテーションの基礎のみならず、授業や研修の現場で、どのようにファシリテーションスキルを導入し効果を高めることが出来るのか、そして、そのための場づくりや授業デザインをどのように行うのかといった点を講義と演習を通して学びました。

開催概要

開催案内(PDF) ポスター(PDF)

【日時】平成30年5月2日(水)13:00~17:00
【会場】
九州大学 伊都キャンパス センター3号館3105・3106教室
キャンパスマップの67番です。

【参加費】無料
【定員】30名

【対象】
授業や研修を実施する上でファシリテーションスキルの導入を検討している方、あるいはファシリテーションに興味を持っている方。大学教職員のみならず、興味や関心を持たれている方を広く対象とします。

【講師】加留部貴行 氏
(加留部貴行事務所AN-BAI 代表、九州大学大学院統合新領域学府 客員准教授、NPO法人日本ファシリテーション協会 フェロー、認定NPO法人日本ボランティアコーディネーター協会 理事・運営委員)

【プログラム】
13:00~14:30:講義
「ファシリテーションを活かした参加型の学びの場づくり」
(1)ファシリテーションとファシリテーター
(2)アクティブラーニング型授業とファシリテーション
(3)参加者同士の学び合いの場を支援する
「対話を通じた対話型授業の組み立て方」
(1)多様な組み合わせで多様なプログラムをつくる
(2)「参加」と「対話」で学習効果を上げる

14:40~15:55:演習「振り返りを深めて実践につなぐ手法あれこれ」
16:05~17:00:講義・振り返り「対話による学びの場づくりの実際」

開催報告

【参加者情報】

学外:15名(うち県外 7名)
学内:18名
合計:33名

【アンケート結果】

《満足度》

満足:17 概ね満足:2 どちらともいえない:0
やや不満足:0 不満足:0

《参考になった点》(抜粋)

  • ファシリテーションとは参加者が「しづらい状況を」を「しやすい状況」に持っていくこと、という基礎的な心構え。
  • ワールドカフェを試行してみたい。
  • ワールドカフェで経験のある教員の方々と話ができて良かった。
  • ワールドカフェ的なものは開いたことがあったのだが、その後の展開をどうすれば次につながるのか、のヒントを頂けたことが今後の活動の参考になるような気がした。
  • 「講義」「演習」「振り返り」の様々な組み合わせについての説明も参考になった。
  • 全てが学びになった。特に、問いの立て方や、「聴(ゆる)す」という基本の概念は特に心に残った。
  • 「何か意見は?」を聞くのでではなく「感想は?」と聞くことで話しやすくなること。
  • 「ではお隣の方と1分話して」と何度も繰り返し行うことを、実践したい。始めのうちは「また」と思いましたが、繰り返し行ううちに話すことが「当たり前」になり、参加していることを実感できた。
  • 全体を通して、大変勉強になり、モチベーションが上がった。また機会があれば、もっと話を伺いたい。

《分からなかった点・もっと説明してほしかった点》(抜粋)

  • ワールドカフェの問いづくりについて、集団(年齢、知識力など)の特性、体験回数などの条件下による設定方法のコツを教えてほしい。
    【加留部先生からの回答】ワールド・カフェの問いをつくる際のポイントは集団特性や体験回数に関係なく、「シンプルに」(平易な言葉を選び)、「考えさせて」(オープンクエスチョンで)、「(できれば)これからを」(未来志向で)、「自分事に」(主語を明らかにする)です。一番のポイントは「ハードルを低く」です。
  • タイムマシン法を利用して将来の計画を立てる際、三段階で具体的な目標を書くのが難しかった。
    【加留部先生からの回答】タイムマシン法では、最初の段階の状態があまりにも抽象的過ぎたり遠すぎると次の段階の状態が飛躍してしまうので書くにくくなってしまいます。スタート時を具体化することをお奨めします。
    ※事務局による補足:タイムマシン法とは、なりたい未来の自分を想像し、その未来に至るまでのいくつかのポイントを設けて、そこでの達成目標を考えていく方法です。
  • ワールドカフェをファシリテーションするコツをもっと知りたかった(自分達が参加者だったので司会する立場として)。
    【加留部先生からの回答】進行役として気をつけていることは、なるべく短めにかつ的確に「進め方」を具体的にお伝えし、参加者に対して精神的なプレッシャーを与えないような言葉選び、声掛けをすることが大切です。参加者の動向を観察するチカラが試されます。
  • プログラムの組み立ての話があったが、いろいろなレベルの人がいる場合はどういったやり方が一番効果的なのか。
    【加留部先生からの回答】どのレベルの人をメインターゲットにするかを考えた上で、それより低い方には足並みを揃えるようなプログラムを早い段階で入れることが必要ですし、逆に高い方にはそのフォロー役を担うような「まぜる」プログラムを意識しています。
  • どうやったら色々な人を巻き込むことができるのか。
    【加留部先生からの回答】とにかく「声掛け」は面倒くさがらずにしっかり丁寧にやることが肝要で、その声をかけるメンバーを多様化することでその輪が広がっていきます。主催者側メンバーの「チーム化」がカギです。
  • ファシリテーションの失敗事例(やってはいけないこと等)。
    【加留部先生からの回答】ファシリテーターが「自分に酔ってしゃべりすぎる(目立つ)」、「難しい言葉を使う」、「準備不足」といったところは要注意です。
  • 「チェックアウト」の実践例、分析方法と活用方法について教えてほしい。
    【加留部先生からの回答】研修やワークショップの最後のプログラムで振り返りとして使うことが多いです。その際に参加者各々にキーワードなどをA4用紙に書き出してもらって話をしていただくと、その用紙を集めて集計することでアンケート代わりに活用することもできます。
  • ファシリテーションの重要性は分かったが、高校の毎日の授業や仕事で実践するための具体的なイメージがまだ分からない。試行錯誤だとは思うが、何か方法や考え方があれば、学びたいと思った。
    【加留部先生からの回答】ファシリテーションは「○○しやすくすること」ですので、授業であれ仕事であれ何かを「○○しにくいこと」を「改善する」イメージが湧けば大丈夫です。程度は問いませんので改善マインドを磨いていくことをお奨めします。
  • ワールドカフェ以外に、交流を活発にさせる方法について知りたい。
    【加留部先生からの回答】要は「メンバーの組み合わせを何度か換える」ことができればかなり交流はできますので、ペアワークや3~4人単位でのバズセッションを短時間でも何度か重ねると活発な交流の場を創ることはできます。
  • セミナーの最後の方で自治体との実践事例についての紹介があった。参考資料やリンクなどあれば教えて頂きたい。
    【加留部先生からの回答】私が連載執筆しています『月刊ガバナンス』(ぎょうせい)の「ファシリテーションdeコミュニケーション」の2016年度分に様々な事例を掲載しています。バックナンバーでみることができるかと思いますので、図書館か直接出版社にアプローチをかけてみてください。
  • 今回のセミナーでの活動を通し、例えばインフォーマルなFD集会として「思い出に残る失敗とそこからの学び」などをテーマに掲げ、ワールドカフェ形式で意見交換・共有を行うことを考えた。活動を行う際に適切なテーマなどがあれば伺いたい。
    【加留部先生からの回答】「思い出に残る失敗とそこからの学び」もいいですね。私が教員向けのFDでよく使う問いは「あなたが一番印象に残っている授業はどのような授業でしたか」です。良いことも失敗したことも抱き合わせでまずは出し合ってみるには良いようです。また「私たち教員は学生から何を期待されているでしょうか」という他者視点で考えてもらうこともありますし、「5年後の私たち教員はどのような授業を行っているでしょうか」と未来予測をするのも面白いかもしれません。いかがでしょうか。ご参考までに。
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