九州大学 基幹教育院 次世代型大学教育開発センター

カリキュラム設計FD(基礎編)を開催しました

令和元年7月19日(金)にカリキュラム設計担当者養成プログラム(基礎編)「学修成果に基づく教学マネジメントに向けて」を開催しました。本プログラムでは、「学修成果に基づく学生本位の教育を展開するためには、大学教育をどのように設計・実施・評価・改善すればよいのか」、「いかなる教学マネジメントの仕組みを構築すればよいのか」といった課題について、「基礎編」「上級編」「実践編」の3回に渡って扱う予定です。今回の「基礎編」では、比較教育学、高等教育論、教育課程論の観点から、学修成果に基づく大学教育をデザインするための基礎的な考え方、及びそれを推進する教学マネジメントの在り方について紹介しました。

開催概要

開催案内(PDF) ポスター(PDF)

【日時】令和元年7月19日(金)14:00~16:00
【会場】JR博多シティ9F会議室 (1) (アクセス

【定員】70名(先着順)
【参加費】無料
【対象】学修成果に基づく大学教育に関心のある大学教職員、大学院生

【講師】深堀聰子
(九州大学 教育改革推進本部・教授)

【プログラム内容】
1. 学修成果に基づく学位プログラムの設計・実施・評価・改善の方法
2. 認証評価第3サイクルにおける3つのポリシーと内部質保証
3. 学修成果に基づく教学マネジメントの取組事例

開催報告

【参加者情報】
学外:65名(うち県外 45名)
学内:4名
合計:69名

【アンケート結果】

《満足度》

満足:17 概ね満足:9 どちらともいえない:1
やや不満足:0 不満足:0

《参考になった点》(抜粋)

  • 学位プログラムの学修成果と授業科目の学習成果の関係と、教学マネジメントはとても参考になった。
  • 学位プログラムの詳細から、学位プログラムと教育課程の考え方の違いなど、用語解説から行って頂いたことがとても助かった。参考例を出しつつ参考例にないものまで解説があり幅広い説明が自分に当てはめやすく参考になった。
  • 「学位プログラム」「学位プログラムの学修成果」「学位プログラムの学修成果を達成しているか」といったことに意識を喚起するための仕組みや企画を立案・実施することが必要であることについて、改めて認識できた。
  • 学位プログラムをはじめとした概念について正しい知識を修得できた。それに伴い、既存の学部学科組織を基準としたDP(ディプロマポリシー)の作成がなぜ抽象的になるか良く分かった。自組織にあるDPの見直しを早急にすべきと痛感した。
  • 学位プログラムの考え方を再度確認できたのは良かった。どこの大学も時間をかけて行っているのだと分かり、これからも何度も説明していこうと思うことができ。その説明を進めるための根拠を頂けて、とてもためになった。

《分からなかった点・もっと説明してほしかった点》(抜粋)

  • 学位プログラムには、通常の教育課程の授業科目の学習成果以外の正課外活動も含まれるのか。
    【深堀先生からの回答】育成する人材像に鑑み、不可欠な要素は、学位プログラムに含まれるべきだと考えます。その一方で、学位プログラムの学修成果は達成可能で測定可能である必要があります。その意味で、学位プログラムに不可欠の要素は正課として位置付け、単位を付与して、成績評価を行っていく考え方をとる必要があるのではないでしょうか。
  • 「学位プログラムの学修成果」説明の際に、「直接測定は(あまり)想定されていない(が考える必要あり)」とコメントをされていたように思う。直接測定はしないが間接的には評価が必要、という意味か?あるいはプログラム修了の根拠となるように徐々に直接測定が求められる、ということなのか。
    【深堀先生からの回答】従来の学位プログラムの考え方では、学修成果の達成に適した授業科目を配置した上で、成績評価と単位認定に基づいて、学位を授与するという考え方がとられてきました。その意味で、個別の学修成果を直接測定することは想定されてきませんでした。しなしながら、学修成果の達成度をより直接的に確認することなく、教学マネジメントを展開することは難しいため、学修成果を直接測定するための様々な工夫が行われるようになってきています。アンケート等による間接評価も、テストやパフォーマンス評価等による直接評価に並ぶ方法の一つです。
  • 卒業要件外となっている教職科目等の取り扱いについて、アドバイスを頂きたい。
    【深堀先生からの回答】教職課程には明確な育成する人材像がありますし、授業科目のウェイトも決して軽くありません。その意味で、教職科目を含まないプログラムと、教職科目も含むプログラムを別立てで設定する考え方ができると思います。
  • 本学ではPDCAサイクルがカリキュラムだけ、授業評価だけと単独で行われていて、全学では回っていない状態。学生数が1500人に満たない規模の大学なので全学での教学マネジメントは可能だと思うが、1つ1つの取り組みをどうすれば繋げていくことができるのかを知りたい。
    【深堀先生からの回答】あれもこれも手がけ、多大な労力を費やしながら、実質的な改善につなげられない状態が長引くと、徒労感が募り、士気が低下し、組織としての取組を持続できなくなります。どのような課題があり、どのような改善を導きたいのか、そのためにはどのような情報が必要なのか、何に優先的に取り組むべきなのかという逆向き設計の考え方で、スリムな教学マネジメントの仕組みを設計していく考え方が重要だと考えます。
  • ポリシーと授業科目との関係性の共通認識を非常勤講師にも理解してもらう必要があると思うが、非常勤講師にも理解してもらうにはどのような方法(説明)が有効かを教えてほしい。
    【深堀先生からの回答】非常勤講師を含む教員団が学位プログラムに関する研修会を実施することが理想的だと思います。実質的には難しいため、カリキュラム・マップ(コース・ツリー)などを用いて、学位プログラムにおける授業科目の役割を分かりやすく説明していく工夫が重要だと考えます。そうした分かりやすい資料は、学生にとっても有用であるはずです。
  • 学修成果の達成度を捉える仕組みの構築(内部質保証)の部分において、学修成果(いわゆるDP)の部分は、高大接続改革で示されている学力の3要素との関係はあるのか。
    【深堀先生からの回答】DPを達成するためには、カリキュラムを整えるだけでは限界があます。既修科目を通して習得した知識や能力、興味関心等にも規定されます。その意味で、学生が高校までの教育を通してどのような知識や能力、どのような学びへの姿勢を身に付けてきることを期待するかを表すAP(アドミッションポリシー)と無関係ではありません。
  • 2040年グランドデザインの解釈を知りたい。
    【深堀先生からの回答】政策の解説をすることが本拠点の役割ではありませんが、グランドデザイン答申のポイントは、本プログラムで焦点化している「学修者本位の教育」「全学的な教学マネジメントの確立」「学修成果の可視化」です。
  • 参照基準の狙いは、自律性や多様性も尊重しながら等価性を高めていくことにあると思うのだが、同軸上で高評価を目指すという画一化や標準化へ繋がってしまう可能性もあると危惧している。この点について、国内外含めこれまでに議論や合意の蓄積はあるか。
    【深堀先生からの回答】現在、教育学分野の参照基準をまとめており、その「参考資料」に英国における参照基準の活用のあり方を解説しています。間もなく公表いたしますので、そちらをご覧ください。
  • スライド19の表で、授業科目1の成果を学位プログラムの学修成果(A~J)にどのように配分又は事前に取り決め(Aを50%、Bを30%、Fを20%)するのかの手法を教えて頂きたい。
    【深堀先生からの回答】どのような学修成果をどのような比重で学生に習得させたいのかは、当該学問分野の全体像と、自大学の特徴を踏まえた高度に専門的な判断によります。学位プログラムを担当される教員団が十分に話し合うことで、暗黙知とされてきたバランスを可視化していくことが求められているのだと考えます。
  • スライド21のサイクル図について、深堀先生はPDCAサイクルという言葉を一切用いなかったのはなぜか。
    【深堀先生からの回答】根拠に基づいて教育改善を図っていくというPDCAの考え方は大変重要だと考えます。ただ、PDCAの「手続き」を順番通り厳格に進めていくことが必ずしも効率的ではないという批判があるように、実際には、目指す人材像に向けて、計画や行動はある程度柔軟であってもよいし、フォーマルな評価を待たずに改善をはかる必要がある場合もあると思います。
  • スライド33や35にある、ステークホルダー調査の活用実績あるいは計画について、何か明確なものがあれば教えてほしい
    【深堀先生からの回答】欧州チューニングの取組では、雇用主に対する集団インタビュー(フォーカス・グループ)を通して、卒業生に期待する学修成果、およびそれがどの程度達成されているかについての聞き取りを行うことが有効だと報告されています。抽象的な学修成果について集団で議論することを通して、初めて共通のイメージを持って語ることが可能になり、実質的な議論に結びつくからです。これは、簡易なアンケート調査では、十分に意味のある情報は引き出せないことを示唆しています。
  • スライド34のアセスメント③~⑤のより詳細な情報を知りたい。
    【深堀先生からの回答】スライド39をご覧下さい。
  • どのような学位プログラムがあるのかなどの具体例がもう少しあればより理解が深まる気がした。
  • 「基礎編」ということで参加させて頂いたが、抽象的な内容で、難易度が高かったような気がした。具体的事例をもっと挙げて頂けると、より理解できたと思った。
  • 九州大学の事例により則したお話を次回聞いてみたいと思った。
    【深堀先生からの回答】11月15日(予定)の「上級編」、12月6日(予定)の「実践編」にご参加下さい。

《その他》(抜粋)

  • グループに分けて、その中で名刺交換や情報交換の場があってもよいのではないかと思った。
    【事務局からのコメント】ご提案ありがとうございます。同様の要望も頂いております。次回以降は、グループワークの導入も検討しております。
PAGE TOP