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九州大学 基幹教育院 次世代型大学教育開発センター > 【開催報告】リベラルサイエンス教育開発FD「『ゆるレポ』に学ぶはじめての研究~ゆるく始めて、しっかり仕上げる~」※質問への回答を追記しました。

【開催報告】リベラルサイエンス教育開発FD「『ゆるレポ』に学ぶはじめての研究~ゆるく始めて、しっかり仕上げる~」※質問への回答を追記しました。

 令和4年3月25日にリベラルサイエンス教育開発FD「『ゆるレポ』に学ぶはじめての研究~ゆるく始めて、しっかり仕上げる~」を開催しました。

 九州大学基幹教育院では、教育関係共同利用拠点「次世代型大学教育開発拠点」として、専門の枠にとらわれず幅広い視野を有する人材を育成することを目的とした教養教育の科目開発(リベラルサイエンス教育開発)に取り組んでいます。一例として、初年次学生を対象に、取り組みやすい身近な題材の中から自分自身で研究テーマを設定し、実際に研究を行ってもらうことで、研究に必要な考え方や手法について学んだり、他者との議論や発表を経て研究の捉え方を分野横断的に理解したりできるような新しい科目を構想しています。

 本FDでは、このような「はじめての研究」に取り組む学生を指導する過程での留意点や課題について学び、議論を深めることを目的として、「ゆるレポ:卒論・レポートに役立つ『現代社会』と『メディア・コンテンツ』に関する40の研究」の編著者である近畿大学の岡本健先生を講師にお迎えし、ご講演いただきました。同書は「ゆるく始めて、しっかり仕上げる」をコンセプトとして、学生が興味を持って取り組んだ、40の幅広いテーマに基づいた研究を紹介することで、研究の面白さを伝えるものです。岡本先生の実際の授業の事例をご紹介いただきながら、学生の関心を「研究」に結びつけていく教育の在り方について議論を行いました。

 

┃開催概要

【日時】 令和4年3月25日(金)13:00~15:00
【会場】 Zoomミーティングにて開催
【講師】岡本健先生(総合社会学部 総合社会学科 社会・マスメディア系専攻)
【対象】 「はじめての研究」の指導に関心のある大学・高校等教職員、研究者
【定員】 100名(先着順)
【参加費】 無料
 

※参考文献
岡本健・松井広志・松本健太郎編著
「ゆるレポ:卒論・レポートに役立つ『現代社会』と『メディア・コンテンツ』に関する40の研究」
人文書院(2021年11月30日)

 

開催案内はこちらをご覧ください。

 

┃開催報告

 

〇アンケート質問への回答(たくさんのご質問をお寄せいただいたため、特に多かった質問へご回答いただいております)

質問1 レポート等の指導、コメントについて
質問者①レポート・論文の内容から形式・表現まで、すべて先生ご自身がご指導なさるのはとても大変なことではないでしょうか。大学内のライティングサポートセンターやチューター等の利用も含めて対応していらっしゃるのか、全くお一人ですべてご指導されているかをお伺いできればと思います。(私自身は勤務校でライティングサポートデスクのチューター育成に関わっておりますが、先生方との連携がまだまだ不足していると感じております。どうすれば安心して学生を送っていただけるかが課題です。)

質問者②学生が提出したレポート等(課題)へのコメントの仕方(その内容や分量も含めて)とそのフィードバック・返却のタイミングについて。岡本先生はおひとりでその作業をされているのですか。学生がとにかく教員からのコメントを欲しがるのですが、一人では質・量ともに限界があると感じています。

 

回答1 ご質問有難うございます。
ライティングサポートセンターやチューター等の利用はありません。また、細かな点について毎度毎度赤字を入れるような指導はしておりません。

ご指摘の通り、自分の作業量が膨大になるのもそうなのですが、学生のことを考えても、まずいところは自分で直したり、人からの意見を聞いて自分で直せるようになったほうが良いという方針です。学生たちには「私がいつまでも手取り足取り指導しないと自分で文章が書けない人になったら困るじゃない?」と言って伝えています。

とはいえ、放置していても上達しませんので、ゼミでの指導はもちろんなのですが、講義においても、レポート・論文の書き方について話したり課題をだしたりしております。
(後に、授業動画をご案内します)

ゼミ生には私の講義はすべて取るように伝えており、そうして何度も習って実践しているうちに身に着けられる学生は身に着けてくれます。身に着けてくれた学生にゼミで研究発表をしてもらい、きっちりと質疑応答をしてもらうことで周囲の学生たちも「ここまでやるものなのか」と影響を受けて全体にレベルが上がっていきます。

基本的にはピアな学びをメインで進めています。ゼミでも講義でも、とにかく半期で成果物を仕上げてもらって文章を完成させるサイクルを何度も繰り返してもらいます。最初に見本が欲しい学生に対しては、過去の卒論やレポートといった見本を提示します。『ゆるレポ』は、まさにそういった見本を集めた本でございます。

ただ、学期末や年度末に、学生がまとめたものについては、その後、個別に面談した時にはコメントを返しています。

それと、書いてみて途中で何か聞きたいことが出てきたら質問を自分で整理して、面談のアポを取って聞いてくださいとお伝えしています。

ご指導が熱心な先生からすると、「そんなことで良いのか?」と思われるかもしれませんが、学生には、次のように説明しております。

 

皆さんは大学生です。
大学生になって皆さんが身に着けるべきは
自分で考える力、自分で行動する力、自分の責任で決断する力です。
つまり、「自立」してもらうことが重要になります。
私が皆さんにお伝えするのは、そうなるためのヒントです。
それをどのように活かすのか、それは皆さんの自由です。

いつまでも頭の中で考えていても、
書くのはうまくなりません。
とにかく自分で判断して、書いて完成させるんです。
そのサイクルをたくさん回すことが大切です。

「恥ずかしい」という意識もあるかもしれませんが、
書いて場数を踏まないと、
どんどん恥ずかしくなっていきます。

 

このような感じで伝えています。

さらに、映像教材として、下記のような形で「論文・レポートの書き方」の動画をアップしてあります。

 

 

『ゆるレポ』の最初のLESSONの内容を講義動画にしたシリーズです。
分野によっていろいろと異なる点はあるかと思いますが、ご活用いただけましたら幸いです。
また、今期は担当している授業の中に配信で実施しているものがありまして、チャットを活用した双方向的な講義を実施しております。

それをアーカイブにして教材として活用しています。

これらの講義の中でも、研究とは何か?論文・レポートはどうやって書くのか?といったことを伝えています。

学生さんからは「なかなか講義でそういうことを話してくれる先生がいなくてとても助かりました」と好評をいただいています。

下記のページにまとめてありますのでよろしければご視聴いただければと存じます。

2022年度前期 YouTube講義配信一覧

 

 

質問2 Google Classroomによるゼミ運営について
質問者①45人の授業で学生同士のフィードバックを得る方法に関して、フィードバックは全員分が岡本先生に提出され、動画作成者ごとに集約した後で返却するというプロセスだと思いますが、これは何かのツールやマクロ等を利用されているのでしょうか?手作業だと少し手間がかかる作業ではないかと思いましたので、お尋ねします。

質問者②Google Classroomを用いた45人ゼミについても、とくに上回生によるサポートのあり方などをもう少し詳しくお聞きしたかったです。

 

回答2 ツールやマクロは使っておりません。

手間がかかりましたが、エクセルで整理しながら実施しました。ツールやマクロで自動化できると良いと思います。

上回生による特別なサポートは、特にありません。

2年生、3年生、4年生は同列に扱っておりまして、相互にコメントを送りあってもらっています。

実際、レポートや論文の書き方を会得するか否かは学年によらない部分があり、2年生の段階でつかめる学生もおります。
そうすると、3年生に対して実に良い質問やアドバイスができることもあり、そのこともまた、学生の学びにつながると考えております。

ちょっとした工夫としては、全学年の学生にコメントする形で担当をしてもらっています。

2年生のAさんは、2年生のBさん、2年生のCさん、3年生のDさん、3年生のEさん、4年生のFさん、4年生のGさんにコメントするように、という具合に、必ず同級生だけでなく、他学年の学生にもコメントする形になるよう差配します。

 

 

【参加者情報】合計78名

 

【アンケート結果(抜粋)】

〇参考になった内容

  • アカデミックリサーチを噛み砕いて学生に授業で教授するノウハウを学べました。有難うございました。
  • 学生が主体的に学ぶ上でのヒントをたくさんいただきました。岡本先生の動画も拝見したいです。
  • youtubeを活用したり、45人ゼミ等、学生が楽しみ主体的に学べるヒントがたくさんありました。書籍も読んでみたいと思います。
  • 「学術」「研究」と「ただの趣味」の違いの説明が大変分かりやすかったです。入口(テーマ)は自由だがアプローチ(研究手法)が異なるという点を、学生にもしっかりと伝えたいと思いました。
  • レポートは実際の完成版を見せた方が質が上がる、という話はなるほどと思った。
  • 学生が書いた良い答案・褒めポイントのある答案(レポート)を共有することや、ダメなポイントの解説用として教員自身がダミーの答案を作ることなど、岡本先生が実践されていることの具体例を惜しげもなくたくさん共有していただけたことが大変ありがたかったです。
  • 言語教育に携わっているのですが、ゾンビ英会話の本を作ったり、ボードゲームを教育に利用する観点は、目から鱗で、ヒントをいただけました。
  • ゲーム開発をすることを通して「研究」しなくてはならない仕組みになっている活動、異学年混淆形式にすることでピアラーニングや自然な繰り返し学習にする仕組みなど。
    岡本先生が問いを立てること、その問いに学術的に迫ることの難しさを述べておられたことに、やはりそうなのか!と思いました。私は職員の立場ですが、教養教育センターでの取り組みを通じて、同様のことを感じ、その力を学生たちにどのようにつけてもらえるのかを考えていたためです。ICUの先生の質問にもとても共感しました。そして、九州大学での1000名規模での授業の展開への試行錯誤もしのばれ、大学は違えど、格闘していることは共通していることに気づかされました。岡本先生の御本をぜひ読ませていただき、引き続きどのようなことを組織としても取り組んでいけば、学生たち一人ひとりが大学で有意義な学問する時間を過ごすことができるか、考えていきたいと思います。
  • 参加者からの質疑応答も含めて、初年次教育に真剣に取り組んでいらっしゃる教員が多くいらっしゃる事を理解させていただきました。僭越ながら、大学固有の質的保障に関わる点を明確に説明いただいてのスキル説明ならば、「ゆるレポ」の説得力が増したのかも知れません。

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