九州大学 基幹教育院 次世代型大学教育開発センター

学際教育に関するFDを開催しました

平成31年2月7日(木)にリベラルサイエンス教育開発FD「これからの教養教育・学際教育を考える ~先進事例と共に~」を開催しました。今回のFDでは、学際系学部として分野横断的な教育を展開されている京都大学大学院人間・環境学研究科/総合人間学部(以下、人環/総人)の方々をお招きしました。講演では、人環/総人での学際教育の現状や課題のみならず、大学院生が主導している領域交差型院生FD「総人のミカタ」について、実際に関わられている大学院生から話題提供をして頂きました。講演及び質疑応答・全体討論を通して、これからの教養教育・学際教育、さらには、大学院生教育について、考えを深めました。

開催概要

開催案内(PDF) ポスター(PDF)

【日時】平成31年2月7日(木)14:00~16:00
【会場】九州大学 伊都キャンパス
センター3号館3105・3106教室
伊都キャンパスマップの61番です。

【定員】30名(先着順)
【参加費】無料
【対象】教養教育や学際教育にご関心のある大学教員、高校教員、大学院生

【講師】
佐野泰之(京都大学・特定助教)
真鍋公希(京都大学・大学院生、「総人のミカタ」代表)
谷川嘉浩(京都大学・大学院生)

関連リンク:「総人のミカタ」ウェブサイト

【プログラム】
14:00~14:05 開会挨拶・趣旨説明
14:05~14:40 教養と学際のあいだで:総人のミカタの理念と活動(真鍋)
14:40~15:00 FDから学際教育を考える:院生発案型プレFD「総人のミカタ」を手がかりに(谷川)
15:00~15:35 人環/総人における学際教育推進の取り組みの課題と展望(佐野)
15:35~15:55 全体討論
15:55~16:00 閉会挨拶

開催報告

【参加者情報】
学外:9名(うち県外 7名)
学内:15名
合計:24名

【アンケート結果】

《満足度》

満足:4 概ね満足:4 どちらともいえない:1
やや不満足:1 不満足:0

《参考になった点》(抜粋)

  • 学際教育がなかなかうまくいかないことが分かり、単に他分野の人を同じ枠組みに入れれば良いわけではないことが再認識できた。
  • 「学際は教育できるか」という視点は興味深かった。
  • 学際的な取り組みに大学院研究科が支援をする制度は九州大学でも導入してほしいと思った。
  • 九州大学でも共創学部が始まったばかりで、類似の学際系の学部が抱えるであろう問題とそれに対するアクションを垣間見たことは大いに参考になった。

《分からなかった点・もっと説明してほしかった点》(抜粋)

  • 「学際」の定義が今ひとつ分からなかった。
  • 学際領域の必要性が、社会的要請なのか学問的要請なのかが見えなかった。つまり、現実社会における問題解決の必要性からなのか、それとも既存の研究で「ある現象を解明」するために乗り越えられない壁があるから学際性が必要性なのか、そのあたりの話を聞きたかった。
    【真鍋さんからの回答】学際が要請される背景が「現実社会の問題解決」なのか「現象の解明」なのかというご質問は、基本的に学際「研究」に焦点を当てておられるように思われます。これに関しては、「学際」概念が、20世紀前半のアメリカの社会科学、とりわけ社会問題の調査研究という文脈に遡れるという指摘(※1 渡邉ほか 2017: 106-8)がありますので、少なくともその起源においては「現実社会の問題解決」への要請が強いといえるように思われます。また、別の方のご質問にあった「学際」の定義についても前掲論文をご覧いただければと思いますが、当日の報告では、基本的には、複数の分野の院生ないし研究者が模擬講義等を通して相互作用することに焦点をあて、そうした状態を「学際」と呼んでいました。
    さて、報告では学際「研究」ではなく学際的な要素を含んだ「教育」についてご紹介したつもりです。京大の場合、旧教養部という組織を改編するという流れの中で「学際」概念が浮上したといえるので、「学際」が要請された背景はやはり社会的・政治的側面に求められます。ただし、学問の細分化に対する問題意識が少なくとも教員の一部には共有されていたからこそ、「学際」または報告した意味での「教養」概念が提出されたわけでもあるので、学問的要請が全くなかったとはいえないでしょう。もっとも、これは京大の旧教養部および現在の総人・人環に限定された話であり、他大学の状況に一般化できないことには留意が必要です。京大のケースについての詳細は、報告書内の拙稿(※2 真鍋 2018)をご覧いただければ幸いです。
    ※1 渡辺浩一・臼田泰如・寺山慧ほか 2017:「学際教育を求めーInterdisciplinarityの歴史と理論」臼田泰如・佐野泰之・瑞慶覧長空ほか編『学際系学部の教養教育 報告書ー教員にとっての学際/学生にとっての学際』105–22.
    ※2 真鍋公希 2018:「『総人のミカタ』について―部局の歴史における位置づけと中心的理念をめぐって」『「総人のミカタ」活動報告書 2017年度前期~2018年度前期』5-15.
  • もう少し全体討論の時間があれば良かったと思った。また、どのように制度設計をしていったのかを聞きたかった。
    【真鍋さんからの回答】報告でも触れた院生質疑については、参加した学部生の感想を踏まえて試験的に取り入れ、効果的と判断したため正式な取り組みとしたという経緯ですが、ほかの点については、主に次の4点を意識して最初に設計したものから大きな変更はありません。(1)模擬講義を1回で終わらすのではなく複数回行い、さらに講義後には検討会を行うことで教育技能の向上を目指す、(2)複数の分野の院生(総人の学系に即してそこから1名ずつ)のリレー形式とする、(3)どこかのタイミングでディスカッションを入れる、(4)学部生に単位が出なくても出席したいと思ってもらうために、コミュニケーションをとれる時間を設ける。学部・研究科の条件に即しつつ、上記の点を踏まえようとした結果、比較的自然に現在の形にたどり着いたというのが現状です。
  • 「学際の教育」をどうするかという具体的な議論は深いとは言えなかった。
    【事務局からの回答】今回のFDは、人環/総人の事例を聞き、学際教育に考えるという目的で行われました。具体的な議論のための材料だったと理解して頂ければ幸いです。具体的な議論については、今後の課題とさせて下さい。貴重なご指摘、ありがとうございます。

《その他》(抜粋)

  • FDとしては、どうしても「教育」の面ばかりフィーチャーされてしまい、うまく「研究」の要素を入れられていないように感じる。例えば、色々な分野での特徴ある「研究室運営」の話を聞ける機会があると、「教育」と「研究」が交わる場所なので非常に面白いし、研究室運営に悩んでいる先生も多くいると思う。また、普段参加されるような、教育に関心のある層以外にもリーチできると思う。
    【事務局からの回答】ご指摘ありがとうございます。本センターとしても、研究室運営などのテーマも取り上げ、開催するFDの幅を広げたいと考えていたところでした。例えば、2/20(水)には「大学院理系研究室のマネジメント -風通しの良い研究室の構築に向けて-」を開催いたしました(開催報告)。今後も多様なFDを企画し、多くの教職員の皆さまに参加して頂けるように取り組んでいきたいと思います。
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