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詳細内容

九州大学 基幹教育院 次世代型大学教育開発センター > カリキュラム設計担当者養成プログラム(上級編) 「学位プログラムレベルの評価と授業科目レベルの評価をつなぐ」

カリキュラム設計担当者養成プログラム(上級編) 「学位プログラムレベルの評価と授業科目レベルの評価をつなぐ」

日時:平成31年3月19日(火)10:00-12:00
会場:九州大学 伊都キャンパス 日本ジョナサン・KS・チョイ文化館

対応モジュール:専門的人材養成
 

┃カリキュラム設計FD(上級編)を開催しました

 

平成31年3月19日(火)にカリキュラム設計担当者養成プログラム(上級編)「学位プログラムレベルの評価と授業科目レベルの評価をつなぐ」を開催しました。今回の研修会では、教育方法学(能力論、学習論、評価論)・高等教育開発論の専門家である松下佳代先生をお招きし、学修成果に着目しながら学位プログラムレベルの評価と授業科目レベルの評価をつなぐにはどうすればよいかについて、具体例を基にご講演頂きました。
 

┃開催概要

開催案内(PDF) ポスター(PDF)

【日時】平成31年3月19日(火)10:00~12:00
【会場】九州大学 伊都キャンパス
日本ジョナサン・KS・チョイ文化館

【講師】松下佳代
(京都大学 高等教育研究開発推進センター・教授)

【定員】100名(先着順)
【参加費】無料
【対象】学修成果に基づく大学教育に関心のある大学教職員、大学院生

【共催】九州大学 教育改革推進本部


┃開催報告

【参加者情報】
学外:65名(うち県外 47名)
学内:11名
合計:76名

【アンケート結果】
《満足度》
満足:31 概ね満足:3 どちらともいえない:0 やや不満足:0 不満足:0

《分からなかった点・もっと説明してほしかった点》(抜粋)

  • 講演で用いられていた「プログラム」という用語と「カリキュラム」という用語の違いについて教えてほしい。
    【松下先生からの回答】「プログラム」はさまざまなまとまりで使われますが、今回は「学位プログラム」または「学士課程プログラム」の意味で使っています。一方、「カリキュラム」も多義的ですが、基本的には、一定の教育目的・目標に合わせて教育内容や学習経験を計画したものを言います(カリキュラムは1週間のカリキュラムのような言い方もできますね)。実態としては重なることもありますが、プログラムは科目(course)をこえたまとまりをもつものとして、私は使っています。つまり、1時間の授業(lesson)、15回の授業からなる科目(course)、4年間のプログラムのように、階層の違いを表すために使っています。
  • 「パフォーマンス評価」について聞きそびれてしまった。これは、どのような意味なのか。
    【松下先生からの回答】パフォーマンス評価とは、パフォーマンス(実演や作品)を通じて概念理解の深さや知識・スキルを統合的に活用する能力を評価する方法のことです。
  • ルーブリック評価で科目を限定して実施されていると記憶しているが、科目を限定するにあたりどのような方法で選択されるか知りたい。
    【松下先生からの回答】パフォーマンス評価を実施しているのは「重要科目」です(もちろん、それ以外の科目で個々の教員がパフォーマンス評価を実施することは妨げません)。「重要科目」とはスライド29にあるように、「その授業科目の目標がプログラム全体の目標に直結する科目(それまでに学んだ知識やスキルを統合し、高次の能力を育成・発揮することを求める科目)」のことです。スライド32にあるように、プログラムを大きく4つの時期に分けて、各時期から1種類を選んでいます。
  • 医療系大学(リハビリテーション)に所属し、科目構成を担当している。本学では臨床実習に出す前にOSCE(Objective Structured Clinical Examination;客観的臨床能力試験)を実施しているが、基本的・部分的な項目であるため、実習段階(目標)ごとの学生の質保証にまでは至っていない。臨床実習というコンピテンシーの評価としてOSCEとPEPAの有用性や使い分けについて教えてほしい。
    【松下先生からの回答】私は大阪の藍野大学の先生方と理学療法分野でOSCEとグループ・リフレクションを組み合わせた「OSCE-R」を開発し、各学年の臨床実習前に実施してきました。PEPA(Pivotal Embedded Performance Assessment;重要科目での埋め込み型パフォーマンス評価)は重要科目でパフォーマンス評価を行い他の科目は教員に任せるという評価システムのことですから、重要科目でOSCE(あれもパフォーマンス評価です)をやると考えれば、OSCEを使ったPEPAという考え方が成り立ちます。実際、藍野大学ではそのように考えて、PEPAを取り入れつつあります。
  • 間接評価をどう使うのか、使えるのか、使っている事例などがあれば教えて頂きたい。
    【松下先生からの回答】質問紙調査(量的な間接評価)や学生の自分の学びや能力についての自由記述(質的な間接評価)は、使い方さえ誤らなければとても有用です。新潟大学歯学部では、パフォーマンス評価を行う際に、質問紙調査や学生の自由記述も取っています。小野・松下・斎藤「PBLを評価する改良版トリプルジャンプにおける「学習としての評価」の要因」(『京都大学高等教育研究』第24号 2018 p35-p44)という論文を書きましたので、ぜひご覧ください。また、斎藤有吾『大学教育における高次の統合的な能力の評価-量的vs.質的、直接vs.間接の二項対立を超えて-』(東信堂 2019)でも我々の研究グループの成果がまとめられています。
  • NSSE(アメリカの学生アンケート)の日本語版を作成し、それを共有するコンソーシアム大学があれば良いと思った。それぞれの大学においてアンケートを作成しているが、質問の有効性や教員、事務方の負担が大きいので、NSSEと同様なものをシェアできれば便利だろう思った。
    【松下先生からの回答】NSSE(National Survey of Student Engagement)は、学生エンゲージメントの測定により、望ましい学習成果をもたらす学生や教員・大学の行動・環境を明らかにすることによって、学生の学びや成長によいインパクトを与える学士課程教育の特徴を浮き彫りにしようとする学生調査です。確かに、NSSEの日本版があると便利そうですね。大学IRコンソーシアムはそれに近いですが。
  • 学習成果の評価をとらえる3つの軸全ての組み合わせについてお話してほしかった。
    【松下先生からの回答】量的・質的×科目・プログラム・機関レベルが残りましたが、スライド22に挙げた指標をご自分で量的・質的に分けてみてください。
  • PBL以外の授業形態でトリプルジャンプに相当する評価をどのように実施したらよいか、事例などあればご教示ください。
    【松下先生からの回答】アクティブラーニングの評価については、松下・石井 編『アクティブラーニングの評価』(東信堂 2016)という本を出していますので、ぜひそちらをご覧になってみてください。
  • 汎用的能力を何でどう測るのが良いのか。
    【松下先生からの回答】私の意見では、汎用性をもっているかどうかは、ある科目で学んだことを、他の科目や授業外のプロジェクト等で適用できるかどうかを通じてしかわからないと思います。というか、使いながら汎用性を獲得していくのだと思います。このあたりをかなり意識的にやっているのが、MinervaやAlverno Collegeです。Minervaについては、 Kosslyn, S. M., & Nelson, B. (2017). Building the intentional university: Minerva and the future of higher education. The MIT Press.が出ています。また、MinervaやAlvernoのウェブサイトからもかなりのことがわかると思います。
  • PROG(プログ)熱はいつまで続くのか?
    【松下先生からの回答】大学間比較や付加価値を示すうえでPROGを便利で有効だと思う大学が多い間は続くのではないでしょうか。
  • 標準テストを代替する「分野別の」ジェネリックスキル測定方法について知りたい。
    【松下先生からの回答】医療分野向けのPROGも開発中と伺っています。
  • エキスパート・ジャッジメントの仕組みをもう少し詳しく教えてほしい。
    【松下先生からの回答】エキスパート・ジャッジメント(あるいは、evaluative expertise[評価についての専門知])の説明については、深堀先生にお任せして今回はふれませんでした。エキスパート・ジャッジメントを単純な形で可視化したものがルーブリックですが、エキスパート・ジャッジメントをすべて可視化することはできないというのが、ルーブリックに対する批判の一つにもなっています。
  • 私学関係者で、大学基準協会の会員校の参加者が多かったように感じた。そのため、大学基準協会における第3期の動きまで網羅されていれば、より良かったと思った。
    【松下先生からの回答】私の所属している京都大学の認証評価機関が大学改革支援・学位授与機構なので、どうしてもそちらを念頭においた話になってしまいます。次回は大学基準協会の認証評価もカバーできるようにしておきたいと思います。
  • スライド52に「文章コミュニケーション、問題解決…などのジェネリックスキルは、学問分野の中で適用されるときにこそ、最もよく学ばれ、評価される」とある。確かに歯学部のようにほぼ100%の学生が同じ道へ進み、生涯その道を歩むというプログラムであれば、その分野内で業務を遂行するにあたって必要とされる能力が重要だろう。しかしそれは分野固有のコミュニケーションや問題解決力ではないか。専門の教育を通して問題解決やコミュニケーション能力を培うことの重要性には同意するが、それは将来的にどのような分野に転身しても汎用的に使えるということや、市民として地域社会を支えていく態度や能力でもあることが前提であると考える。国家資格をともなう専門分野とそれ以外の分野は同じ土俵では語れないと考える。
    【松下先生からの回答】重要なご指摘、ありがとうございます。おっしゃるとおり、新潟大学歯学部の学生のうち、歯学科の学生のほとんどは歯科医になりますし、口腔生命福祉学科の学生は歯科衛生士か社会福祉士になる学生が多数ですから、大学で学んだことが仕事に直結します。その意味で、大学教育全体のうち特殊な領域であることは間違いありません。
    一方、私たちは、PBLで身につけた問題解決能力が歯科以外の文脈でも使われているかについて質問紙調査や自由記述を使った研究を始めています。まだ細かい分析はできていませんが、問題解決についてよく理解している学生(PBL評価で好成績を収めている学生)は、日常生活(アルバイトや部活動など)で問題に直面したときに、PBLで学んだ問題解決プロセスを使っているようです。これも、汎用性を示す証拠になりますね。
    特定の分野で身につけた問題解決能力、論理的・批判的思考力、コミュニケーション等がどのようにして汎用性を得ていくのか、現在、科研で取り組んでいます。
  • 医療系や福祉系、工学系のように、卒業後の「現場」が明確な教育プログラムでは、PEPAのようなアプローチで育成するコンピテンシー群の選択について、「社会」の側からの全面的な異論はあまりないと思われる。しかし、例えば西洋中世史といった分野であったらどうだろうか。分野別参照基準の「歴史学」を用いるにせよ、あるいはイギリスのSubject Benchmark StatementsのHistoryを参照するにせよ、当該専門分野の専門性に基づいたコンピテンシー育成を目標にかかげ、それを可視化し、質保証するための体制作りは、PEPAに近い形で可能だと思う。しかし、そうした専門分野の専門性を通して育てられたコンピテンシーで果たして納得してもらえるのか、また分野別参照基準に依拠していたとしても、そこに書かれたジェネリック・スキルに焦点をあてた場合、その分野の専門性という観点からの質保証として、納得のいくものとなるだろうか。
    【松下先生からの回答】大変参考になるご指摘ありがとうございます。おっしゃるように、PEPAは今のところ分野が限定されているように見えるかもしれません。ただ、さまざまな科目で学んだことを使って取り組むようなパフォーマンス課題を1学年に1回くらい組み込むことはできなくはないのではないかと思います。自分(たち)で取り組んだプロジェクトをレポート、ポスター発表、制作物、実演などの形で表現し、それに対して他者から評価をもらうという機会が正課や準正課においてさまざまな形で組みこまれると、学生が能力を発揮するとともに育成するとてもよい機会になると思います。
    なお、歴史学についていえば、スタンフォード大学のSamuel Wineburgたちのグループは、歴史学が市民性を育てるために必要な分野であるとして、それが現在のポスト真実の時代を生きる市民のcivic online reasoningの力を育てることにつながるということをさまざまな研究で示そうとしています(https://sheg.stanford.edu/)。どちらかといえば中等教育がメインですが高等教育も含まれています。これは、subject benchmark statementsのgeneric skillsと重なっているように思われます。

《その他》(抜粋)

  • 内容が豊富だったので、もう少しディスカッションや質疑の時間があれば良かったと思う。
    【事務局からのコメント】ご意見ありがとうございます。質疑応答やディスカッションを十分取れるような時間設定を検討いたします。
  • 会場が博多駅付近だと有り難い。
    【事務局からのコメント】ご意見ありがとうございます。博多駅付近での開催希望は他にも頂いております。遠方からの参加者が多く見込まれる研修会に関しては、博多駅付近での開催を検討するようにいたします。
  • 今回のプログラムの発展形の企画も期待するが、入門~上級のシリーズも継続的に実施されることを期待している。
    【事務局からのコメント】ご意見ありがとうございます。平成31年度の開催予定については、現在検討中です。決まり次第、ウェブサイト等でお知らせいたします。

 

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