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九州大学 基幹教育院 次世代型大学教育開発センター > 【オンライン開催報告】2/26(金)FD講演会「ルーブリックを活用した評価と授業改善」

【オンライン開催報告】2/26(金)FD講演会「ルーブリックを活用した評価と授業改善」

日時:
1)オンデマンド型動画配信 令和3年2月15日(月)~2月26日(金)
2)リアルタイム型質疑応答 令和3年2月26日(金)14:00~15:00

会場:
1)オンデマンドによる動画配信
2)Zoomによるリアルタイムでの質疑応答

対応モジュール:
大学教職員職能開発

 

┃大学教職員職能開発に関するFDを開催しました

令和3年2月、FD講演会「ルーブリックを活用した評価と授業改善」を開催しました。今回の大学教職員職能開発FDでは、九州大学教育改革推進本部の長沼祥太郎先生に、参加者が明日からご自分の授業実践でルーブリックを活用することができる、あるいは、より良い活用方法を思いつけるようになることをめざして、オンデマンド型動画配信とリアルタイム型質疑応答を組み合わせた研修を実施していただきました。

 

┃開催概要

オンデマンド動画配信開催案内(PDF)

【日時】

1)オンデマンド型動画配信
令和3年2月15日(月)~2月26日(金)
※講師の長沼先生のご厚意により、講演動画は、引き続き公開しております。本講演にお申し込み、ご参加いただいた方はご活用ください。
※学術論文等への無断引用や営利を目的とした利用は固くお断りいたします。
※学内での研修等において動画使用をご希望される場合には、当センターまでお問合せください。
E-mail:kyoten★artsci.kyushu-u.ac.jp(★を@に置き換えて下さい。)

2)リアルタイム型質疑応答
令和3年2月26日(金)14:00~15:00(Zoomミーティングを使用)

 

【会場】
1)オンデマンドによる動画配信+2)Zoomによるリアルタイムでの質疑応答

 

【定員】
1)オンデマンド動画配信 100名(先着順)
2)Zoomによるリアルタイムでの質疑応答 30名(先着順)

 

【参加費】無料
【対象】ルーブリックを用いた授業に興味を持っている、あるいは実践している大学教職員、高校教職員などの教育関係者
【講師】長沼 祥太郎(九州大学 教育改革推進本部・講師)

 

【プログラム】
1)オンデマンド動画配信
 0_イントロダクション動画
 1_はじめの一歩から編動画
 2_初級編動画
 3_中級編動画
 4_上級編動画
2)Zoomによるリアルタイムでの質疑応答

 


 

┃開催報告

【参加者情報】
1)オンデマンド動画配信(申込者数)
 学外327名 学内53名 合計380名
2)Zoomによるリアルタイムでの質疑応答
 学外5名 学内4名 合計9名

 

【アンケート結果】
《参考になった点》(抜粋)

  • ご紹介のルーブリックでは、考えるプロセスを評価されていることを認識してもらえそうなので、とても参考になりました。
  • 指導前にルーブリックを生徒に示して、学習の到達目標を理解させて、授業に臨ませたいと思います。
  • ルーブリックの作成手順です。具体的でわかりやすかったので、ぜひ取り入れてみたいと思います。
  • 知っていることもありましたが、全体的にとても参考になりました。特に最後の学生と一緒にルーブリック(の一部)を作り上げるという発想はなかったです。
  • 学内実習の中でルーブリックの提示と評価(学生による自己評価・教員評価)を行い、学生の技術・知識向上につなげたいと感じた
  • ルーブリック自体の知識が乏しかったのですが、初歩から大変分かりやすく説明をして下さり、今後に取り入れていくイメージをもつことができました。特に質疑応答セッションで4つの観点からの指標についてもご紹介下さり、論文も実際に読んでみて取り入れようと思いました。ありがとうございました!
  • ルーブリックが言葉による記述である以上、客観的な評価とみなされる理由が今まで納得できませんでしたが、本講演ではそのようなルーブリックの限界をふまえたうえで、理念上の理想論でなく現実の運用レベルに即したルーブリックの意義と利点をわかりやすく説明してくださり、非常に納得がいきました。動画を分けて複数のレベルで説明してくださったこと、豊富な事例、FAQ資料も理解のうえで大変役立ち、ありがたかったです。
  • なかなか手を出さないままになっていたルーブリックを授業で取り入れていこうと思うきっかけになったと思います。学生の提出した事例と先生のコメントが具体的で実際のルーブリック作成時のイメージがつかめました。
  • 全体的にたいへん参考になりました。ルーブリックを授業評価に使いたいと考えていたものの、具体的にどうすればいいのかがわかりかねていましたが、これで具体的につかうことができます。大変助かりました。

 

《分からなかった点・もっと説明してほしかった点》(抜粋)

  • 海外での研究も含めルーブリック導入した場合としない場合の学習効果の差がデータで示されているのであれば、教えていただきたいです。
    【長沼先生からの回答】2010年に出された“A review of rubric use in higher education”という論文に”Rubric use and academic performance”という節があるので、こちらをご覧いただくと良いと思います。基本的にポジティブな結果ですが、解釈はいろいろできると思います。例えば、ルーブリックを作ることで教員側がより明確に授業をデザインした結果として学生の学習成果が高くなったり、学生がルーブリックに書かれていることをしっかり読みながら授業を集中して聞いたために、学習成果が高くなったりなどです。
  • 予期せぬ学修成果をどう取り扱うか。
    【長沼先生からのご回答】いくつかパターンがあると思っています。第一に、「印象点」のような観点を別に設けて、他の観点では回収できないような学修成果を評価できる観点をあらかじめ設けておく方法です。第二に、予期せぬ学修成果はそもそも成績評価の対象としない、という態度をとることです。これは、一見すると若干不適当にも思えますが、そもそも授業の評価としては、基本的には、「こちらが意図して学ばせたいと思ったこと」をきちんと学習できているのかどうかが問われるべきというのが私の立場となります。そのため、予期せぬ成果を成績評価に含めることは、それは学生のパフォーマンスを評価はしていますが、「この授業でしっかり学べたかどうか」を本来意味するはずの成績評価の理念から外れてしまうと思っています。一方で、期待とはずれたパフォーマンスではあるけれども、良いパフォーマンスをした場合、教育者として何かしらそれをポジティブに捉えてあげたいと思うのも事実です。そのため、私であればそれば、評価とは切り離した上で、良かったところとして別途フィードバックをしてあげるようにしています。以上をまとめると、予期せぬ学修成果をうまく回収できるような「ゆるい観点」を1つ設けておくか、毅然としてそれは評価とは切り離すか、のどちらかだと考えています。

  • 毎回の授業で300字程度のリアクションペーパーを提出させているが、こうした短文課題にもルーブリックは用いた方が良いかどうか。
    【長沼先生からのご回答】この短文課題が、授業内容に関しての簡単な確認程度であって、成績評価の観点からしてもそこまで重いものでないのであれば、ルーブリックを用いて透明性を確保した上で、教員側も汗を流してまで頑張って採点に取り組む必要はないと考えます。特に大学教員の場合、教育のみならず研究にも時間を割くことが重要と思われますので、教員の負担にならない範囲で、学生とコミュニケーションをとりながら、使用できそうな場合には使用する、というくらいの取り入れ方で良いのではないかと個人的には考えています。こうした短文課題の採点は軽めにして、本当に大変そうなレポート課題などに絞ってルーブリックを使ってより厳密に採点をしていくというのが現実的ではないでしょうか。そのため、回答としては「用いても良いのではないか」というものになります。

  • さらに楽にルーブリックを準備する方法は。
    【長沼先生からのご回答】今回、初級編の動画で2つのパターンでルーブリックを作成していますが、他の先生方と一緒にルーブリックを作成したり、同様の科目を教えている他大学の先生と情報を共有することで、準備にかかる負担を減らすことは有効と思われます。なお、個人的には、オンライン授業化の流れもある中で、講義動画などをオンデマンド動画などで代替することも選択肢として十分考えられるようになった現在、むしろ評価に関しては、教員は時間を使えるようになるのではないかと思います。

  • フィードバックする上で、優良事例から差を埋めるために何をすればよいか考える機会を設ける具体例
    【長沼先生からのご回答】基本的に授業にしっかり参加して学習していれば、優良事例になるはずというのが私の立場になります。この立場に立てば、優良事例から差を埋めるためのヒントは、それまでの授業の教材の中にあるはずです。そのため、例えば優良事例となった学生に、授業内容のどのあたりが特に重要と考えているかを他の学生に向けて最終回で説明してもらったり、あるいは、学生同士でグループで作品を見せ合い、授業の教材のどの箇所を参考にすれば自分も優良事例に近づけるかを考えさせる機会を設けさせる、というのは1つの有効な方法のように思います。いずれにせよ、このような機会を設ける必要があるため、最終レポートのあとに一度授業を行う(これが15回目に該当)というのが良いように思います。

  • 学生のみならず社会人もですが、自分自身の評価に慣れていません。学生がルーブリックをどう位置付けているのか、自己評価をどのように受けいれているのかも伺いたかったです。
    【長沼先生からのご回答】ご質問に直接答えるものは見つかりませんでしたが、学生の反応としては、ポジティブなもの(例:自分の現在の能力について考える良い機会になった)からネガティブなもの(例:評価は難しかった、めんどうだった)など多様と思います。一方で、ルーブリックを自己評価に活用することの効果は以下の論文で整理されております(星裕・越川茂樹(2020)「大学教育においてルーブリックを自己評価に活用した影響と課題」の表4)。なので、こうした影響があることを学生にも共有しつつ、自己評価の意義を伝えると、自己評価に対してよりポジティブな態度を取るようになると考えられます。自己評価をより上手にできるようになるための方法としては以下の論文が参考になります。

    ・岩田貴帆・田口真奈(2020)パフォーマンス課題における自己評価力を高めるための協議ワークを取り入れた相互評価活動の開発

    ・岩田貴帆(2020)協議ワークを取り入れたピアレビューによる学生の自己評価力向上の効果検証(2021年7月よりオープンアクセス)

    ・斎藤有吾・小野和宏・松下佳代(2017)ルーブリックを活用した学生と教員の評価のズレに関する学生の振り返りの分析 – PBLのパフォーマンス評価における学生の自己評価の変容に焦点を当てて-

  • よくあるルーブリックの記述語で「2つ以上」「1つのみ」という量的基準の記述について、課題の設問で「2つ以上挙げなさい」などと明記がない場合には不適当であると思われますが、いかがでしょうか。つまり、学生が課題において求められているもの(=1つでは不十分など)が理解できていない場合に、その尺度を使用するのは「後出しジャンケン」のように感じられるのではないかと思います
    【長沼先生からのご回答】同意します。これを「課題コンプライアンス(task compliance)」と専門的には表現するのですが、後出しジャンケンのように思われないように、こちらとしては求めているものをなるべくしっかりと伝達し、その能力があればしっかりと誤解なく、求められている形で課題に回答できるように配慮する必要があると思われます。一方で、身近なところでは、レポート課題において「考察せよ」という表現が理解できないために、本当は正しく考察できるにもかかわらず、採点結果としては低くなるという例が頻発しているように思っています。そうならないよう、しっかりと伝達することが重要と思います。

  • 複数教員による共同開講授業のルーブリック活用・調整の実際など(ニーズ高)

  • 「巧みに書けている」「適切ではない」といった観点の巧み、適切の基準が非常に難しいと感じた。特に複数の教員で評価するときが難しいが、どうすれば一定になるのか。
    【長沼先生からのご回答】海外では、ルーブリックを用いたモデレーションのワークショップというのがしばしば用いられているようです(例:Oakleaf, M. (2009) Using rubrics to assess information literacy: An examination of methodology and interrater reliability)。手順は例えば以下の通りです。

    1.評価者に、サンプルを独立して採点してもらう。

    2.評価者を集めて回答を検討し、一貫性のある回答と一貫性のない回答のパターンを特定する。

    3.一貫性のない回答について議論し、調整する。

    4.新たなサンプルに対して独立採点のプロセスを繰り返す。

    5.再度、採点者全員を集めて回答を見直し、一貫性のある回答と一貫性のない回答のパターンを特定する。

    6.一貫性のない回答について議論し、調整を行う。このプロセスは、採点者がスコアリングルーブリックの適用について合意に達するまで繰り返す。

    このような方法で、より一貫性のある採点ができるようになるとのことですが、やはり主観的なところは排除できないので、100%客観的とは行かないと思います。そのため、このような訓練を経た教員で採点したのち、複数の教員の平均を取る形で最終成績として返すのが次善の策と思われます。

  • 主題から外れるのですが、今回のオンデマンド教材に作成されたツールを知りたいと思いました。様々な工夫がなされた動画であったと思います。
    【長沼先生からのご回答】Mmhmmというこちらのアプリになります。サイト内でスクロールしてもらうと、作成者自身が動画を載せてくれていますので、使い方のイメージをつかめると思います。

    https://www.mmhmm.app/jp/

     

 

 

 

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