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九州大学 基幹教育院 次世代型大学教育開発センター > 【オンライン開催報告】カリキュラム設計担当者養成プログラム 「教育と研究を両輪とする高等教育における教学マネジメント-九州大学の取組-」

【オンライン開催報告】カリキュラム設計担当者養成プログラム 「教育と研究を両輪とする高等教育における教学マネジメント-九州大学の取組-」

日時:令和3年7月5日(月)13:00 ~14:00
会場:zoomミーティング

対応モジュール:
専門的職員養成

 

┃専門的職員養成に関するFDを開催しました

 令和3年7月5日、カリキュラム設計担当者養成プログラム 「教育と研究を両輪とする高等教育における教学マネジメント-九州大学の取組-」を開催しました。

   九州大学では、学問分野(学際領域を含む)を基盤とする人材育成を、研究活動と一体不可分のものとして効果的・効率的に推進するために、厳選された教学マネジメント枠組みについての全学合意を平成30年度に確立し、展開してきました。本講演では、その成果と課題を整理し、Beyondコロナ時代における方向性を展望しました。

 

┃開催概要

開催案内(PDF)

【日時】令和3年7月5日(月)13:00 ~14:00

【会場】Zoom ミーティングにて開催

【参加費】無料

【対象】大学における教学マネジメントに関心のある大学等教職員

【登壇者】
深堀聰子(九州大学 教育改革推進本部・教授)

【プログラム】

  1. 九州大学教学マネジメント・システムについて(動画視聴) 15分
  2. 九州大学教学マネジメントを推進するためのツールの具体について(講演) 15分
  3. 質疑応答・ディスカッション 30分

 

┃参考資料

※1  九州大学教学マネジメント枠組み、九州大学カリキュラム・マップ|3ポリシーについて
(九州大学教育改革推進本部 WEBサイトへ)

※2 九州大学教学マネジメント枠組みについて(オンデマンド動画)
(Youtubeへ)

 

 

┃開催報告

【参加者情報】
 学外62名、学内12名、合計74名

 

【質疑応答】

  • ルーブリックについて、授業の到達目標から自動で?生成されるような説明があったように思えますが、もう少し詳しく説明いただければ幸いです。

【深堀先生からのご回答】「学位プログラムの学修目標」は、カリキュラム・マップから九州大学のシラバスに自動的に転記されるようになっている。授業担当者は、シラバスに転記された学習目標と照らし合わせながら、「授業科目の到達目標(評価の観点)」を自分自身で入力する。そこで入力した内容が、ルーブリック(授業科目の到達目標を評価の観点とするSingle Point Rubric)として自動生成される。自動生成されたルーブリックは後から編集ことができるため、水準や記述語を追記して、一般的なルーブリックとして成績評価の基準として提示することも可能である。

 

  • 教職共同について、九州大学において具体的な事例がありましたらご紹介ください。

【深堀先生からのご回答】九州大学には、IR室や教育改革推進本部のように、教員と職員が密に連携しながら仕事を進めている部署がいくつか存在する。(深堀先生が所属する)教育改革推進本部でも学務部と密に連携しながら取り組みを展開しており、教務・学務情報システムの運用において、教学マネジメントをどのように導入していくのかという点についても、職員と教員とが議論しながら進めてきた。教員と職員がともに取り組むことで実現できた好例であるといえる。

 

  • 教学マネジメントにおいて、学習成果の可視化も重要かと思います。特に、プログラムレベルの学習成果の可視化についてどのような方法を採用されていますでしょうか。

【深堀先生からのご回答】学習成果の可視化については、教育課程で「学修目標達成度調査」として、全学共通で、いくつかのチェックポイントを設けている。具体的なチェックの方法は、部局の実態に合わせてそれぞれ異なっている。例えば、物理学分野では、入学時に学力調査を行ったうえで、成績分布や授業アンケート、卒業論文の共通ルーブリック評価などを、進級時のチェックポイントで導入している。また、機械工学分野では、八大学工学部長会議の調査、国立教育政策研究所のテスト問題を導入している。その他、卒業論文の審査において論文をそのまま評価するのではなく指導教官と教員団がアンケート調査の形式で学生の学修目標達成度を回答したり、小規模の部局であればeポートフォリオを用いて指導教官や指導教員団、メンターらが360度評価を行ったり、といったさまざまな取り組みを行っている。こうした内容については、学内の教育課程委員会(部局によって名称は異なる場合がある)が、恒常的に結果を分析して評価していくことで、教育の質を保証するしくみになっている。さらに、今年から九州大学ではラーニングアナリティクスセンターが全学組織として拡大している。そうした中で、成績評価の分析、教学IRなどについても、今後の課題として取り組んでいく予定である。

 

  • とくに人文・社会科学の場合、研究によって更新された学術を、同質を求めやすい日本企業が求めていることはまだ多くはないのでないか、という点について、九州大学ではどのように、先生方、または学生に説明されていますか?

【深堀先生からのご回答】文学部・人文科学府の学習目標は、理系科目のように言語化されておらず、複数の授業科目を通して統合的に達成されるよう設定されている。物理学などが物質を対象としている学問分野であるのに対して、人社系は人間社会を対象としている学問分野であることから、より統合的に、補完的に物事を捉える必要があり、この点が、学習目標においても明確に打ち出されていると考える。例えば、新型コロナ感染拡大の状況下では、病気を治すことだけが重要となるのではなく、社会において表出してきたさまざまな歪みに対して問題提起を行うことが、人社系の学問分野に求められる重要な役割となっている。このような社会における気づきを、学習目標と連関させながら学生が説明できるようになるといったことをめざしている。

 

  • 今回お話いただいた教学マネジメントを貴学において推進するにあたって,各学科において授業科目数やその内容などカリキュラムの改編もあわせて行われたのでしょうか?

【深堀先生からのご回答】カリキュラム・マップは非常に膨大なものであり、必修科目と選択科目のうち何を記載するのかについて精選していくというプロセスがあった。この過程において、「学修目標を達成するうえで何が必要不可欠であるのか」という議論が深まったと思う。今後、カリキュラムの精選などを議論する場合には、カリキュラム・マップを用いて、「どの授業科目が必要不可欠であるのか」を議論する一つの手がかりになるのではないかと考えている。ただ、それは部局で検討する内容であるので、教育改革推進本部が方向性を示すわけではない。基幹教育科目(初年次科目)には、多くの部局の教員が全学出動することで提供されている科目が多くある。そうした科目が、基幹教育と専攻教育の接合の観点からどういった役割を果たしていくのかという点については、議論を進めているところである。

 

  • ルーブリックが自動生成されるのはとても便利だとは思いますが、このルーブリックに基づいて、教員が学生を適切に評価していることは、どのようにチェックされるのでしょうか? ルーブリックとは全く的外れな評価になっているケースはないでしょうか?
  • ルーブリックに基づいて、個々の学生の到達目標達成度合いについては評価されると思いますが、それらの総合として、科目として到達目標を達成させるものになっているかはどのように判断されていますでしょうか。

【深堀先生からのご回答】「授業科目の目標に即して学生の評価を行う必要がある」という点について、九州大学ではシラバスシステムを通して、学内合意を形成しようとしているところである。現状では、授業態度やレポートの提出回数の観点から成績評価を行う教員も存在している。それらも一つの評価の観点ではあるが、学習者本位の教育という観点からは、最終的には、「学修目標が達成されているか」という観点から単位認定を行うことが重要であり、この点について合意形成を行おうとしている。
また、九州大学では、教員評価についても、「九州大学教育イノベーター指標」を設けて議論を始めたところである。具体的にどう評価するのかというツールが存在していなかったため、教学マネジメント枠組みに基づいて教員評価も展開していこうとしているところである。願わくは、今後は各部局において、シラバスの到達目標を確認し、それに基づいて評価が行われているかを確認していっていただきたいと考えている。
GPAの分析については、シラバスシステムに基づいてどのような変化が起こったのかについて、客観的なデータをもとに追っていきたいと思っている。

 

  • 学位プログラムの学修目標と授業の到達目標の関連付けにはエキスパートジャッジメントの涵養が大変重要だと思います。かつて工学系のプログラムについての取り組みについてお話を伺いましたが、九大ではその膨大なコースの全てでこの取り組みを進めておられるということでしょうか、よろしくお願いいたします。

【深堀先生からのご回答】今後、シラバスシステムは、全ての学部において、学位プログラムの学修目標と授業科目の到達目標が並列して表示されるシステムへと変更される予定である。そうした中で、教員が到達目標の設定をあらためて考える、学生や同僚教員に対しても公開される中で、その妥当性について見直す、ということが行われるだろうと考えている。現時点では必ずしも完璧な状態ではないかもしれないが、教員自身の自己省察や学生からの質問への対応などを通して、徐々にブラッシュアップされていくだろうと期待している。

 

  • 九州大学の教学マネジメントの枠組みでカリキュラム改正を行う場合、どのくらいの期間、時間を想定しているのでしょうか。

【深堀先生からのご回答】大幅な改正をした場合には、新旧カリキュラムが同時並行で走ることになるので、各部局の負担が非常に大きい。そのため、実質的にはカリキュラム改正は微修正を繰り返しながら進めていくことになると思う。今後、時代の要請に合わせて改組を行うことになれば、科目の編成を大幅に変更することになるだろう。現状では、科目レベルでの微修正を進めながら必要なデータを蓄積しておいて、大幅な改正が必要になったときに、きちんと改正ができるように備えておく、という考え方である。システムとしては、微修正には対応できるようになっている。

 

  • 九州大学版のカリキュラム・マップを作成するにあたり、具体的にどのように作成されたのかをもう少しお教えください。例えば、方針策定後、各学部がマップを作成され、それをセンターがフォローしたか等。また、マップを作成するにあたり、日本学術会議分野別参照基準を活用されたのでしょうか?

【深堀先生からのご回答】カリキュラム・マップの概念モデルについては全学合意を構築している。全学合意の構築するにあたっては、まずは、機械工学コースをサンプルとして作らせていただいた。サンプルは、まっさらな状態から作成したわけではなく、既存のカリキュラム・マップの考え方に基づいて、修正を繰り返しながら作成した。修正を行う際には、日本学術会議の分野別参照基準やイギリスのsubject benchmarkを参照しつつ、3ポリシーが国際水準に達しているかという観点から比較検討を行った。九州大学に独自の学修目標があれば本学の強みと捉え、足りない部分があれば、補うべきものとして検討するべきという観点で見直しを進めた。その結果、いくつかの部局では、倫理に関する学習目標などを後から補足した。
既存の取り組みをさらによくするためにはどうしたらいいかという発想のもと、サンプルを作成して実現可能性を確認しながら、全学合意を進めているところである。

 

【アンケート結果】
《参考になった点》(抜粋)

  • IR・点検・評価担当者の視点から参加させて頂きました。結果を点検・評価、IRによる分析をするのではなくカリキュラムを設計し各科目の到達目標と整合しつなげることが非常に重要だと考えました。
  • DPと各科目の到達点の関係について、漠然としたイメージはありましたが、今回の学びでそれがはっきりしました。また、評価の質の保証をどうするのかについて、悩んでおりましたが、考えを整理するきっかけをいたただ来ました。ありがとうございました。
  • 授業科目の到達目標が、ルーブリックへ転写される点はとても参考になりました。考えてみるとあたりまえのことですが、改めてルーブリックを作成せずとも、その基本形が生成されるのは省力化にもなりますね。
  • シラバスが同じシステムのものだったため、大変参考になりました。マップにツリー要素が含まれていることも分かりやすく、参考にできると思いました。各科目の到達目標がマップと整合しているかどうか、成績評価が正しく機能しているかは、あらためて質保証の根幹であると再確認できました。
  • 教員の立場からすると、カリキュラムデザインする専門職の方と授業方法や評価の方法を相談できるのは大変有意義でありがたいことですが、職員になろうとすると、教員と研究と教育に対する考え方の理解を共有できるかどうか、ネックだと感じます。
  • 従来型のカリキュラム・マップとカリキュラム・ツリーのハイブリッドの性質を持つ新たなカリキュラム・マップを作られた点が参考になった。
 

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