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九州大学 基幹教育院 次世代型大学教育開発センター > 【開催報告】大学教職員職能開発FD「TA制度の未来を考える〜九州大学の実践例を参考に〜」

【開催報告】大学教職員職能開発FD「TA制度の未来を考える〜九州大学の実践例を参考に〜」

令和4年3月15日に、大学教職員職能開発FD「TA制度の未来を考える〜九州大学の実践例を参考に〜」を開催しました。

近年、ティーチング・アシスタント(TA)制度は、大学教育の中で大きな役割を占めるようになりました。過去、TAには、出欠管理や教材印刷など単純な業務ばかりを任せられることがあれば、逆に、授業や評価など、学生であるTAには負担が大きい業務が任せられるなど、業務の内容が不適切であることが少なくありませんでした。しかし最近では、TAが担当できる業務を明確に提示したうえ、授業担当教員の教育的配慮の下、TAに学部学生等に対するチュータリング、実験、演習等の教育補助業務を担当してもらうことで、大学教育の充実化が図られるようになってきました。さらに、TA活動を通して、TAを担当する学生自身に対しても、将来大学教員になるため、また、実社会における指導力のトレーニングの機会になるように図られるなど、TA活動への参加そのものが持つ教育効果にも注目が集まっています。
そうした中、九州大学では2019年度後期から新しいTA制度を開始しました。本FDでは、まず、九州大学のTA制度改革の内容、PFFP(Preparing future faculty program)やティーチングフェロー(TF)制度を紹介し、その後、アンケート結果や、TA活動に関わった教員、学生の双方の声をもとに改革の過程で明らかとなった課題や今後の展望について広く意見を交換するとともに情報を共有しました。さらに、さらなるTA制度の発展を目指して議論を行いました。

 

┃開催概要

【日時】令和4年3月15日(火)13:00 ~14:50
【会場】Zoomミーティング
【対象】 大学教職員等

 

┃プログラム

  1. FDの概要説明
  2. 開会挨拶 谷口説男(次世代型大学教育拠点長/基幹教育院長)
  3. 講演1 九大のTA制度について 〜概要説明〜 野瀬 健(基幹教育院/教育改革推進本部)
  4. 講演2 九大のPFFPとTF 長沼祥太郎(教育改革推進本部)
  5. 講演3 新制度の実施報告(アンケート結果をもとに) 鄭 漢模(教育改革推進本部)
  6. 教員と学生の声
    花田和明 教授(九州大学大学院総合理工学府)&岳 其霖 さん(九州大学大学院総合理工学府・学振特別研究員)
    田中真理 教授(九州大学基幹教育院)&脇浜 幸則さん(九州大学大学院人間環境学府)
  7. 休憩
  8. 質疑応答・総合討論
  9. 閉会の挨拶 野瀬 健(基幹教育院/教育改革推進本部)

 

┃開催報告

【参加者情報】合計49名

  【参考資料】九州大学 ティーチング・アシスタント(TA) ハンドブック

 

【アンケート結果(抜粋)】

〇参考になった内容

  • TAの質保証は、教育実施にあたって部局等の「個別の文脈」からの脱却が重要であるとの思いを強くしました。
  • 制度の意義はよく理解できました。部局により教員数や体制が異なり、理想的な運用までは道のりが長いと感じました。
  • TAする側のメリットと成長を中心に、受講する学生のことも配慮しながら、考えられているという理念・姿勢は確認できた。TAをつかう教員側の研修や意識改革も必要ではないかな、とも感じた。ただ、TA活動をしたりPFFPを受けた学生が教員になっていけば、少しずつ変わっていくのかなとも感じた。
  • TFの方が授業を担当されるにあたり、TFご本人だけでなく先生方も、かなりの時間をかけて準備や指導されていることを知り驚きました。
  • PFFPを終了することで「授業者が教える」から「学習者が学ぶ」へと視点が変わったこと、それと共に、学習者になったときの意識が変わったという話は、とても印象的でした。より多くの方がPFFPのようなプログラムを受講できるようになることが、どの大学においても大切だと改めて思いました。
  • 大学院生が指摘されていた教育について学ばずに仕事に就く大学教員の難しさは、自分が若い時に感じたことでもありましたのでよくわかります。そのためにも新TA制度は意義があると感じます。一方、アンケート結果のご報告にあったPFFPが実際のTAの業務と乖離しているという大学院生の回答から、両者の間の橋渡しとなるプラクティカルな科目が開講されるような全学的な協働体制が必要ではないかと思います。

 

〇総合討論・アンケート質問への回答

質問1 新制度のTA制度では、学生が教育に携わるウェイトが従来よりも重くなっており、その分、実働時間が増える傾向にあるように思います。しかし、部科に配分される雇用時間数は、あまり変わらないと思います。このような規定勤務時間数を超えた実働について、学生からの意見はありますでしょうか?

回答1 本学でも、規定勤務時間数を超えた実働について、学生から相談はあります。実習や実験を伴う科目を担当する学生から意見が寄せられる傾向があります。そういった実働が発生しないように全学に周知していますが、教育の充実とのバランスを考えると強くは言えないので、まだ課題が残っている状態です。

 

質問2 M1 が PFFP を受講してますが、ATA の経験なく受講できるのでしょうか?

回答2 受講可能です。受講に関してATA経験を必須にしていないのは、個々の学生の状況を鑑み、ATA経験のない卒業間近の大学院生でも受講可能にするためです。ただし、本来はATAの経験をもってPFFPを受講するのが理想です。TF希望者には、PFFP受講終了後でもいいので、ATAとして実務経験を積むことをお勧めしています。

 

質問3 PFFPの修了判定はどのように行っているのでしょうか?また、合格率はどのぐらいでしょうか?

回答3 この科目の単位が取れれば修了としており、最後まで受講すれば、通常は修了(単位を得ること)できます。正確に計算したことはないですが、最初の段階で受講を断念する学生が1-2割ほどいるため、これまでの合格率は85%くらいと思っていただければと思います。

 

質問4
1)TA給与の出所は、学部の予算、研究室の予算など、さまざまなのでしょうか?
2)同一院生が、TAとRA(リサーチアシスタント)の両方で雇用されることは可能でしょうか?
3)RAの場合も、今回のTAのような共通の研修プログラムは用意されていますか?

回答4

1)おっしゃる通り、九大では様々です。ただし、全学から一定金額を学部(部局)へ振り分けています。
2)可能です。従事時間の制限はあります。
3)現状では用意されていません。

 

質問5 BTAになるために、「安全教育」と「TA 基本講習」を受講する必要があるとのことですが、受講期間はどれくらいの期間なのでしょうか?また学生は遠隔で受講するのでしょうか?また、「TA基本講習」の資料を参考までに見せていただくことは可能でしょうか?

回答5 安全教育は学生生活ハンドブックをベースにしており、小テストはMoodle(学内限定。SSO-KID、パスワード要)上で受けてもらいます。TA基本講習はMoodleで受講します。オンデマンドで各自受講する形式です。なお資料は、学内の方ならこちらのURLより閲覧可能です。

 

質問6 九州大学TAハンドブックの27ページに、授業時間内の勤務時間について記載がありますが、授業時間「外」の勤務はどのように管理されていますか?1回あたりの勤務時間の上限を定めている等されているのでしょうか?また勤務の管理は教員が行われているのでしょうか?

回答6 勤務時間の管理は雇用している先生ですが、時間外勤務の管理方法は学部(部局)により異なります。基幹教育の場合は、時間外勤務を要する理由書を提出していただく場合があります。また、勤務時間の上限に関しては、TFだと『1クウォーターの目安:8コマx(授業時間1.5h+準備時間1.5h)=24時間』として、提出されたTF申請時の書類で、これと比べて大きすぎないか、小さすぎないか、ということを確認しております。

 

質問7 新TA制度の実施は、大学院進学促進に向けて何か期待されている効果や狙いはありますでしょうか。

回答7 大学院進学促進は大学を挙げて取り組んでいるので、新TA制度を通じて大学教員を目指す学生が増えることを期待しています。

 

質問8 「教育能力に応じた手当の支給と処遇改善」とありましたが、BTA、ATA、TF別に給与額が異なるということでしょうか。

回答8 その通りです。
(令和4年3月現在、BTA:1,000円、ATA:1,400円、TF:1,900円。時給換算)

 

質問9 本FDのタイトルにもある、「TA制度の未来」を考えた際に,理論と実践を架橋することの難しさにぶつかります。九大に限らず,TA需要が学部学科といった文脈固有なものにならざるを得ない実情に対して,全学的な機関である高教機構・センターがどの程度寄り添えるのかを常々課題に感じています。今後,新しいTA制度のさらなる実質化に向けて,各部局に向けたより直接的なFD活動(教育改善活動)と結びつけて展開する可能性はあり得るものでしょうか?検討されている方向性等がおありであれば,可能な範囲でご教示いただければ幸いです。

回答9 各学部で行われている専門的な教育に配慮して、TAが活躍できるよう全学的にバックアップを行いたいです。基礎的な「教える」ということに関して全学から人材を集めてすべての学部や学科の基礎トレーニングを担っていくという需要はあると思っています。しかしながら、TA教育プログラムでは全学部学府の科目をカバーできないため、担当教員には科目別講習(TAハンドブック参照)をお願いしています。科目別講習の実施率の調査はまだ行っていません。今後の方向性としては、学部や学科を回ってこの制度に関してしっかりと説明し、制度を有効活用していただきたいです。そして、フィードバックをもらってTA制度をより使いやすいものに更新していきたいと思っています。

 

質問10 TAをされる方の特徴について質問です。TAをされる方は基本的に将来研究員や大学の教員として就職を希望される方が中心ですか?

回答10 本学のTAは3階層(BTA、ATA、TF)あり、TAになる理由も様々です。
TFについて言えば、大学教員になりたい人もいれば、単に教えることを学びたい(就職は民間企業希望)という学生もいます。そのため、PFFP受講者の中には大学教員を目指さない学生もいるのに、授業でシラバスの書き方まで教える必要はないのではないか、という指摘もありましたが、TFを育成するための授業の質を上げるために、授業計画の立て方や評価方法までしっかりと教育しています。また、教員希望でなくても、色々な分野の学生と触れ合う機会があることに喜ぶ学生の声もあります。

 

質問11 TAをされる方のニーズに研修や育成を求めていない場合でもPFFPや育成制度は有効かと思いますか?

回答11 有効だと思います。講習が学生のニーズと一見異なる内容で有用に感じられないとしても、TAとしての意識や心構えは高まるものと思います。

 

質問12 貴学ではSA(スチューデント・アシスタント)制度はあるのでしょうか。あればTAとの仕事のすみわけはどうしているのでしょうか。SA制度がなければ本学SAがするような仕事をTAがしているのでしょうか。また、募集はどのようにしているのでしょうか。本学では教員がゼミ生などを見つけて採用しますが、学生もしくは院生向けに毎年応募をかけているのでしょうか。
※質問者の大学ではSA(学部生)が出席調査やパソコン設置・回収などで働いているとのこと

回答12 本学にSA制度はありません。BTA(学部生が取得できるTA資格)というTA階層があり、同じような業務も担っていますが、単なるお手伝いではなく、TAとして教育補助業務に従事してもらっています。採用については、教員からの声かけがメインですが、TAポータルでも募集は行っています。

 

質問13 制度運営に関わり、勤怠管理等のより詳細部分の概要についても詳しくお伺いしたいと思いました。

回答13

1)TA勤務時間監督者は、基本的に担当教員

2)勤務時間には事前準備、事後の整理等の時間を含むことができるが、教員の指示に基づく業務に限る

3)勤務時間記録簿は教員・学生双方確認の上で提出

 

質問14 TAをつける科目の採択やもしくは、科目は指定科目なのかどうかを知りたかった。

回答14 各教員がTA配置の必要性を書類として提出し、部局の裁量で決定している状況です。部局によっては、TAをつけることのできる科目、人数が指定されている場合もあります。

 

質問15 TF を導入するにあたっての部局での取り扱いについて。

回答15 部局ごとに多少の差異はあると思われますが、一例は以下の通りです。

例)年に2回、部局事務よりTF雇用に関して教員に連絡。

PFFPの受講完了者に対して、授業の担当教員がTFのオファーを出す。

TF採用書類を作成し、講義開講部局の教授会等で審議。

了解が得られたら、教育改革推進本部で審査。TFとして認定され、活動可能に。

 

質問16 大学学部生をTAとして育てる意義・可能性について。

回答16 TA自身にとっては、自分が数年前に受けた学習の振り返りという意義があり、受講生にとっては、大学院生ほど年齢の離れていないTAに対して気軽に質問できる意義があると考えられます。また、学部内での縦の繋がりの構築へ寄与する可能性も考えられます。

 

質問17 TAコミュニティーのようなものを構築した場合のピアサポートの可能性について。

回答17 こうしたピアサポートは現状九大ではありませんが、あるととても良いと思います。

 

質問18 TAと教員の関わり方のもう少し具体的な事例を聞きたかった。

回答18 TAと教員のかかわりについては、こちらにTF経験者の学生が細かく書いてくれています。また、TAポータルでもインタビューを記載しています。

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