日時:平成30年8月7日(火)~8月9日(金)
会場:九州大学 伊都キャンパス センター3号館3105・3106教室
対応モジュール:専門的人材養成
┃インストラクショナルスキルズFDを開催しました
平成30年8月7日(火)~8月9日(木)カリキュラム設計担当者養成プログラム「インストラクショナル・スキルズ:学修成果に基づく大学教育の展開に向けて」を開催しました。九州大学大学院基幹教育科目(九州大学PFFP; Preparing Future Faculty Program)の一環として開催された今回の研修会では、大学院生と大学教職員が共に、学位プログラムの設計や評価に関する国内外の事例についてグループワークを交えながら学びました。研修会後半には、シラバスやルーブリックの作成にも取り組みました。
┃開催概要
【日時】平成30年8月7日(火)~8月9日(金)
【会場】九州大学 伊都キャンパス
センター3号館3105・3106教室
※伊都キャンパスマップの67番です。
【定員】20名(先着順)
【参加費】無料
【対象】学修成果に基づく大学教育に関心のある大学教職員、大学院生
【講師】
深堀聰子(九州大学 教育改革推進本部・教授)
【プログラム内容】
〈8月7日(火)13:00~18:10〉(休憩時間40分を含む)
1. オリエンテーション
2. 学修成果重視の教育改革の背景
3. 学修成果に基づく学位プログラムの設計・実施・評価・改善の方法に関する欧州における先導的取組
〈8月8日(水)13:00~18:10〉(休憩時間40分を含む)
4. 学修成果に基づく学位プログラムの設計・実施・評価・改善の方法に関する米国における先導的取組
5. シラバスの書き方
6. ディスカッション
〈8月9日(木)13:00~16:20〉(休憩時間20分を含む)
7. 「考える力」を問う課題やテストを作成する方法・ルーブリック等を用いたパフォーマンス評価
8. ディスカッション・総括
※本プログラムは、九州大学大学院基幹教育科目(九州大学PFFP; Preparing Future Faculty Program)の一環として開催されました。
┃開催報告
【参加者情報】
学外:14名(うち県外 9名)
学内:10名
合計:24名
【アンケート結果】
《満足度》
満足:7 概ね満足:3 どちらともいえない:0 やや不満足:0 不満足:0
《参考になった点》(抜粋)
- 欧米の現状を知ることで、なぜ、日本の大学が混乱をしてしまうのかも理解できた。時間はかかるが学位プロフィールから設計を行う動きの必要性を学内で共有し、行動に移していきたい。
- DP(ディプロマ・ポリシー)からシラバス、アセスメントへの落とし込みプロセスについて具体的に学べたことは、求める学修成果の獲得を目指すカリキュラムデザイン(の実質化)の方法として非常に有益だった。
- 学修成果に基づく大学教育の質保証について、形式的な解釈や運用へと進んでいるように感じることも多かったが、その背景や課題について理解を深めることができた。今回の参考とすべき先導的取組や課題を踏まえて、本学での取り組みを改めて見直していきたい。
- 欧州での学位プログラム設計に際して、EQF/NQFと分野別参照基準の両方が機能を果たしているという点。日本においてはNQFがないということを考えると、質保証の体制を各大学において機能させる際に、EQF(ないしどこかの国のNQF)を参照して、それがあるかのように設計する必要があるか、といったことを考えている。
※EQF(European Qualifications Framework:欧州資格枠組み)、NQF(National Qualifications Framework:国家資格枠組み)、
【深堀先生からのコメント】高等教育の質保証を学修成果のレベルで実質化させる上で、高等教育資格枠組みを構築することが、日本にとっての極めて大きな課題だと思います。学修成果の範囲と水準に関する合意形成を行わないまま、高等教育の質保証に資する情報公表を行おうとするならば、「単位の取得情報」「学位の取得情報」「就職率・進学率」「学修時間」「学生満足度」と言った数値目標に、大学教育の実践が縛られる状況が生み出されます。これらの指標は、確かに教育の質の高さを表す指標と言えるのかもしれませんが、学修成果に基づいて厳格な成績評価を行うインセンティブを奪ったり、学修成果を習得するために要する学修時間の個人差を無視したり、労働市場の状況に大学教育の質の評価が過度に規定されたりする危険性もはらんでいます。
《分からなかった点・もっと説明してほしかった点》(抜粋)
- 米国大学のアクレディテーション(認証団体による審査・認定)において、標準テストを活用した学習成果の可視化が求められていると示された。係る状況として、州立大学では標準テストを活用してカレッジポートレートでスコアを公表していることが理解できるが、私立大学はどのような状況なのか。
【深堀先生からの回答】米国では、学修成果の可視化の手段の一つとして、標準テストや大規模学修実態調査の活用が提案され、州立大学が中心となってVoluntary System of Accountabilityなどの枠組みが構築されてきました。その一方で、私立大学を含むリベラルアーツ・一般教育の推進を目指す大学協会(AAC&U)による共通ルーブリックの構築も進められてきました。Lumina財団による高等教育資格枠組み(Degree Qualifications Profile)の構築・普及も目指されています。学修成果の可視化には複数の団体が、複数のアプローチで取り組んでいます。 - チューニングの過程で学位プロフィールを作成するのは非常に時間のかかる仕事という話があったが、大学での具体的な実践例を挙げてもらえるとありがたい。特に、雇用主との協議をアリバイに終わらせずどのように実のあるものにするか、学内でどのように合意していくのか非常に難しいのではと思われ、その点を克服するための方法や戦術が分かるととても参考になると思った。
【深堀先生からの回答】欧州のErasmus Mundus Master of Arts Euroculture、米国Utah State University History Program等の事例が分かりやすいと思います。 - チューニングにおけるCompetencesとLearning Outcomesの分割は、それほど上手くいっていないのではないか。A Tuning Guide to Formulating Degree Programme Profilesなどでは、Competencesは、学習者の側に属し、生涯的に展開していく個別的能力という観点によって、能力のドメインとでも言うべきものを区別するために記述される能力(カテゴリー)であり、その点で集団的なものでもあるとされる(Programme Level)。Learning Outcomesとは観点の点で異なる、という理解で良いのか。
【深堀先生からの回答】学修成果の範囲と水準に関する合意形成は、時間と手間暇のかかる取組で、その在り方に関する明確な(分野間の)合意が確立されいるとは言えません。Tuning Guideは、Tuningと各国の学術承認にかかる情報センターとの共同作業の中で、多様な学問分野を想定しながら作成された、いわば調整と妥協の産物といえます。看護学、化学、物理学といった比較的構造化された学問分野の観点からは異議があるのかもしれません(学位プログラムを通して追求するコンピテンスの数など)。Glossary(pp. 52 & 55)のコンピテンス(学修成果)はプログラムを通して学修者が獲得するもの、ラーニングアウトカム(学習成果)は授業科目を通して教員が教授・評価するものと言えます。”