嗅覚九州プロジェクト

現状

嗅覚九州プロジェクトは、現在、特定の研究プロジェクトとしてではなく、個別の研究テーマに関する共同研究として嗅覚研究を実施しています。下記情報は活動記録として残しますが、各種相談・問い合わせは当研究室の個別案件として対応させていただきます。

      

背景

嗅覚は最も原始的な感覚でありながら、最も解明が遅れている感覚のひとつだと言われています。におい知覚に関する主観的な評価やにおいの経験的生理活性効果などの知見は昔から蓄積されてきましたが、におい物質の種類・量とそれらの生理・心理作用との定量的な関係性を科学的にきちんと調べた実験的研究はそれほど多くありません。嗅覚神経科学の歴史はとても浅く、生物の嗅覚センサである「におい受容体」がAxelとBuckによって発見されたのが、1991年のことです。それ以降、においの基質であるにおい分子に関する分析が進みましたが、脳の中でどのような嗅覚情報処理が行われているのかについては、実験的にも理論的にもまだ詳しくわかっていないのが現状です。

その理由の一つに、研究の困難さがあります。視覚刺激や聴覚刺激は非物質刺激(質量がないという意味で)であり、PCで簡単に作ったり制御したりできます。そのため、実験も比較的容易で研究者人口も多く、日進月歩に知見が蓄積されています。一方、嗅覚刺激は物質刺激であり、におい物質の精製・分析・制御をするには、専門家が特別な装置を用いて、注意深く作業を行う必要があります。そのため、神経科学者が実験するには敷居が高いのです。研究者人口は視覚や聴覚に比べて圧倒的に少なく、科学的なエビデンスも乏しいと言えます。

感覚情報処理全般に興味のある者としては、このチャレンジングな嗅覚という相手に、いつか取り組みたいと思っていました。そして農学部の清水先生(農化学者)らと私(脳科学者)の5年に及ぶ共同研究の末に当プロジェクトが誕生しました。

経緯

概要

当プロジェクトは、においを知り、活かし、作ることを科学するをスローガンとして、におい物質、遺伝子、細胞、自律神経系、脳の嗅覚系、行動、心理に至る超多階層な領域で、実験と理論の双方からにおいが生体に及ぼす影響を調べてきました。生物としてのメカニックな環境応答メカニズムを明らかにするためにマウスや線虫を用いた実験を、においの心的メカニズムを明らかにするためヒトを用いた実験を行ってきました。

嗅九概要

当プロジェクトでは、医・農・理・工・文という極めて広範な学際的連携を実現し、他に類を見ない研究体制を構築しました。全員が准教授以下の(口だけではなく実働ができ、実力のある)若手現役研究者ということも特長の一つでした。さらに、実験家の各レベルでの実験結果を理論家が総括してモデル化するという、理論集約型実験研究のスタイルを取っている事も大きな特長でした。文理融合・多部局連携の「におい」研究基盤・教育拠点として多くの派生プロジェクトを生み、現在はプロジェクトを超えて活発に活動しています。

当プロジェクトで取り組んでいたこと

研究手法

  • ガスクロマトグラフ質量分析等を用いた化学物質の精製、提示、分析
  • モデル生物(線虫、マウス)を用いた実験
  • ヒト実験(脳波、心電図、眼電図、筋電図、唾液、サーモグラフィ、心理計測)
  • 独自プログラム開発によるあらゆるデータの数値化、モデル化(波形解析、画像解析、統計検定など)
  • コンピュータ・シミュレーション

成果発表

2014年10月18日~11月14日
医農理工文連携による「におい」の最先端総合研究
九州大学総合研究博物館 特別展示 ―第13回 P&P 研究成果一般公開― 「九州大学教育・研究の最前線」
九州大学 伊都キャンパス 椎木講堂 ホワイエ

岡本が代表を務め、平成24~25年度に実施した研究プロジェクトの研究成果の一部がポスター展示されました。

その他の業績リストはメンバが個別に公開しています。時間ができればまとめて掲載したいと思います。

公開日: 2014年08月20日
最終更新日: 2019年12月18日