迷惑メールの見分け方

研究者の(それなりに公的な)伝達手段のデファクト・スタンダードは電子メールです(そして研究者が使うイラストのデファクト・スタンダードはいらすとやさんですね)。私も毎日かなりの数の電子メールを受け取り、返信しています。そしてそれに少なからぬ時間と労力を取られています。だからこそ、増え続ける迷惑メールの対策には常に頭を悩ませています。

迷惑メール対策と言えばフィルタリングですが、仕事の電子メールアドレスは公開しており、新しい相手からいきなり英語で重要な電子メールが来ることがあるため、単純なルールではふるい落としができません。論文がそれなりの論文誌に載ると世界的に電子メールアドレスが収集され、色々な所から毎日色々なお誘いが来るようになります。95%以上は単なる迷惑メールであっても、たまに重要な連絡があるので侮れません。重要っぽく見せかけて実は詐欺まがいの依頼などもあるので、もっと侮れません。

電話は、迷惑セールス(過去には関西方面の不動産投資業者が極めて悪質でした)対策のため、完全非公開にしてから原則必要な要件しか来なくなりました(大学の代表電話経由でアクセスしようとする相手には取り次ぎません)。原則非公開のプラベートの電子メールでは、プロバイダが提供する強力なフィルタを掛け、さらにメーラーでドメイン(場合によってはトップレベルドメイン)でごみ箱フィルタかKILLフィルタをかけているので、実はあまり手元には届きません。しかし、仕事の公開電子メールではそうはいかないのです。

とは言え、長年の経験からパッと見で迷惑メールを判定できる私なりの主観評価フィルタがある程度できてきました。以前雑記に書いて好評だったので、改めて以下に迷惑メール判定の流れと種類別判定基準を詳しくまとめておきます。特に若手の方には参考になると思います。

迷惑メール判定の流れ

最初に送信元をチェックしましょう。知らない機関や人からだと、疑いながら本文を開きましょう。それで開封確認のリクエストがあった場合は迷惑メールと判定して構いません(開封確認リクエストを設定される事がそもそも迷惑)。次に本文に目を移し、冒頭の宛名をチェックしましょう。そこに敬称+個人名が正しく書かれていないものも迷惑メールと判定して問題ありません。多いのは、Colleague(s), Delegate(s), Researcher(s) などですが、Dear Dr., なるテンプレ記入忘れのようなものもあります。それっぽく書かれていても、名前を間違えている失礼なものは迷惑メールと判定して無視しましょう。私の場合、Dear T Tsuyoshi というのが多いのですが(一応 first name は合っている)、先日届いたものは Dear Dr. T Tuomas となっていてもはや T しか合っていないというびっくり仰天のメールもありました。宛名に敬称+個人名が正しくと書かれていても、Greetings! (こんにちは!)などハイテンションな挨拶で始まるメールは迷惑メールで良いと思います。宛名に敬称+個人名がきちんと書かれていて、常識的なトーンで始まっていると思われる文面の場合は、仕方ないので下記の要領でチェックし、迷惑メールだと判定できた場合は適切なフィルタを設定した上で削除しましょう。

論文誌への投稿依頼の場合

聞いたことのない論文誌からの投稿依頼は、まず迷惑メールと判定して問題ありません。聞いたことのない論文誌のさらに特集号だったりすると、怪しさ満点なのでやめましょう。大抵がハゲタカジャーナルだと思われますが、仮にそうではない新規ジャーナルであったとしても、ダイレクトメールで投稿を募らないといけないようなところはやめた方が良いと思います。

そうは言っても、どんどん新しいオンライン・ジャーナルが作られているので、稀に有力な新規ジャーナルからも投稿のお誘いが来るかもしれません。または、自分が知らないだけで、実は結構有名な専門誌からのお誘いと言うこともあるかもしれません。過去に出版した論文を引き合いに出して、あなたが出版したこの論文に関係のある論文誌だから・・・とかもっともらしい事を書いて誘ってくる事も良くあります。

もし、判断に迷うような場合は、次の2つのチェックをしてみてください。1つ目はインパクトファクター(IF)です。論文誌が古くても新しくても、IF が載っていないとか自分の業界で異様に値が低い場合は、やめた方が良いです。2つ目はウェブサイトと投稿システムです。ジャーナルのウェブサイトと投稿システムがしっかり作られている(お金がかかっている)場合はきちんとしている確率が高いですが、投稿先のメールアドレスが書かれていて原稿をここに送れというようなものはハゲタカジャーナルの可能性が高く、迷惑メールと判定し無視して問題ありません。

ただし、1つ気をつけないといけない事があります。それは、メールの内容が投稿依頼ではなく、査読依頼やエディタの就任依頼などの場合です。この場合は、自分が担当できるか、すべきかをよく検討し、出来るだけ早くきちんと回答しないといけません。全て引き受けると身が持たないのでおすすめしませんが、全て断るのも好ましいとは言えません。自分の論文を投稿した際、査読を受けて(色々な意味で)お世話になった事は、今度は自分が査読をすることでお返し(仕返しではない)すべきだからです。

国際会議への参加依頼の場合

ハゲタカジャーナル以上に最近問題になっているのは、ハゲタカ国際会議です。しかしながら、我々の業界ではそもそも国際会議での発表があまり業績として評価されない傾向があるので、本当に行きたい国際会議か、知り合いや先輩や恩師などから発表を頼まれた国際会議しか行かない事が多いです。従って、知らない名前の国際会議に知らない名前の人から参加を依頼された場合は、基本的に迷惑メールと判定し無視して問題ありません。

しかし、悩ましい表現があります。それは招待(invite)です。単なる国際会議の発表はあまり評価されないとしても、招待講演だとそれなりに評価の対象となるので、それっぽく書かれていると心が少し揺らぎます。もちろん、ハゲタカ国際会議はそこを狙っているのです。見かけ上の招待講演を量産して参加者を募り、お金を稼ごうという狙いです。どう考えても怪しいので、やはり無視するに限ります。もし、まともな招待講演を海外から依頼する場合は、旅費と滞在費が出ますので、その話が詳しく書いてあるはずです。本当だと喜ぶべき依頼なのですが、自分できちんとやり取りして確認するか、事情がわかりそうな人にアドバイスをもらうことをおすすめします。「喜んで行ってみたら実際は費用が支払われなかった」という最悪なケースは避けないといけません。

研究室受入の問合せの場合

私は研究室受入に関する問合せには基本的に必ず返事を書くことにしていますが、不自然だったり失礼だったりするメールには必ずしも返信する必要は無いと思います。例えば、宛名が書いていないもの、研究内容が大きくミスマッチなもの、私の過去の論文やウェブサイトを全く読んでいないと思われるような将来構想を書いているものは、テンプレ化したメール本文の一部あるいは全部を使って、少しでも関係のありそうな分野の研究室の PI に手当たり次第にメールを送り付けていると思われるからです。過去にこういう事がありました。宛名が無く、内容も私の研究室に本当に興味があるとは到底思えない内容のメールが同じ人から何度も送られてきたので、受け入れる意思がない事とその理由と、失礼なメールになっていることを指摘したら、本当かウソか本人は何度も送りつけていた事を全く認識していないと言うことがありました。海外から、あるいは海外への問合せは、返事が来ない事が多いとは言え、誠実に問合せが出来ない人には、誠実に対応することはできません。

公開日:2019年03月18日
最終更新日:2019年03月19日